シリコンバレーテクノロジー 2018.02.13

金メダルは誰の手に!? IoT通信を支える注目テクノロジー競争の行方は?

こんにちは、Nissho Electronics USAの小松です。

日本が寒波真っ最中のなか、米国西海岸サンノゼは2月だというのに既に昼間は20度を超えています。天候に恵まれた過ごしやすい日が続く一方で、日差しは非常に強く、先日ついにサングラスを購入しました。

さて、平昌オリンピックが先週開幕しましたが、スポーツ業界のみならず、ICTビジネス界でもIoT通信をとりまく代表者競争が日々盛り上がりを見せています。今回は、そんな無線通信をとりまく注目テクノロジーの行方を考察してみたいと思います。

IoTデバイスの出荷台数が80億を突破、本格的なIoT時代へ

Gartnerによれば、2017年時点でインターネットに接続されたデバイス数は80億*を突破しました。期待を裏切らないこの数値は、2020年時点で約250億に到達すると言われており、IoTをとりまくビジネスはいよいよ本格的な盛り上がりを見せ始めています。

このIoTデバイス増の流れがある中で押さえておきたいのが、それらをつなぐ「通信技術」ではないでしょうか。以前より活発な議論が進められているこの通信技術に関する議論の行方が今後どうなるのか、各テクノロジーから考察していきましょう。

*各社算出基準によりデバイス数にはばらつきは見られるため、あくまで参考値としてご理解ください。

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着々と進化を続ける「WiFi」

WiFiでは、「WiFi HaLow(802.11ah)」と「HEW(High Efficiency WiFi)(802.11ax)」が注目すべき技術でしょう。WiFi対応デバイス出荷台数は既に累計数十億台となっています。言うまでもありませんが、そもそもの市場からの期待値は高く、既にWiFiメーカー各社はIoTデバイス間通信を意識した機能群サポートを発表しています。

スループットに定評のあったWiFIが、従来課題になっていた消費電力削減や、端末密度の高いIoTデバイス間通信効率を高めることで、WiFiビジネスの可能性を大いに広げるでしょう。業界団体であるWiFiアライアンスにより先日発表された、次世代のWiFi暗号通信プロトコルの新規格「WPA3」リリース発表においても、IoTを意識したセキュリティ強化が謳われています。WiFi側の機能実装に加えて、IoTデバイス側仕様をいかに早く新技術に対応させるかが今後の通信技術競争の鍵を握りそうです。

テクノロジー推進役の活躍が「LPWA」成功の鍵を握る

Low Power Wide Area(LPWA)における注目テクノロジーでは、「SigFox」、「LoRa」、「NB-IoT」を取り上げたいと思います

LPWAは周波数として1GHzに満たないサブギガ帯を利用し、低消費電力かつ長距離通信を実現しますが、この3つのテクノロジーはいずれも似通っています。そのため、成功の鍵を握るのは各テクノロジーを推進するプレイヤーではないでしょうか。

「SigFox」は、フランス SigFox社が展開する独自仕様のグローバルIoTネットワークとして既に世界数十ヵ国で提供され、日本では京セラココミュニケーションシステムが唯一の「SigFox」事業者としてサービス展開を進めています。その独自仕様性と、提供事業者がSigFox社を除くと各国1社唯一となる点が興味深いところです。

一方、「LoRa」は、オープン仕様ゆえアライアンスも活発でプレイヤーが様々であり、日本国内でも各社で「LoRa」対応製品開発やサービス検討が進んでいます。モジュールやチップセットメーカーが多い「日本ならでは」に期待がもてるテクノロジーですが、対応製品開発の遅延は国内浸透に大きく影響する可能性があります。また、順調に進めば日本から海外への輸出事業を通した、例えば、同技術に積極的なComcast(米)、Tata(印)、Orange(仏)、SK telecom(韓)等とのグローバルなエコシステム形成がより進むかもしれません。

LTEテクノロジーをベースとした「NB(Narrow Band)-IoT」は、今回取り上げた3つの中で唯一無線局免許取得が必要であるがゆえに、自ずと携帯事業者のような専門家がサービスを牽引することになります。海外組ではVerizonやT-Mobile(米)、Deutsche Telekom(独)が積極的であり、日本でも大手携帯事業者3社が検討を進めています。NokiaやEricsson等、大手製品プロバイダの取組にも注目したいところです。

ダークホースとしての「Bluetooth」にも期待

個人的に注目しているのが「Bluetooth」です。特にここしばらくは、「BLE(Bluetooth Low Energy)」というキーワードを良く目にするかもしれません。

Bluetoothと言えば、ヘッドフォンやオーディオプレーヤー等、消費者向けデジタル機器の近距離無線通信の立役者になっていることは広く知られていることかと思います。1:1通信という制限はありつつも、無意識のうちにBluetoothの恩恵を被っている方は読者の皆様の中にも多いかもしれません。

BluetoothはWiFiと並び、既に何十億もの対応デバイスが世界各国で利用されています。このように既に慣れ親しまれた「枯れた」テクノロジーであることから、新たなIoTデバイス側への機能実装も容易に実現できる可能性があります。

最新仕様であるBluetooth第5世代バージョンにより、Bluetoothメッシュと呼ばれる考え方も追加されました。これにより、従来からの低消費電力実現は勿論のこと、Bluetoothデバイス同士が1:1のPoint to Pointで接続されるのではなく、Point to Multipoint さらにはMultipoint to Multipointで接続され、網目状につながることにより通信エリアをより広範囲に拡大することが可能です。

従来の消費者ニーズのみならず、企業ニーズを満たすテクノロジーとして発展する可能性があり、新たなサービスの可能性を予感させてくれます。

おわりに

今回はIoTに必要とされる通信テクノロジーに関して寄稿させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。過去より議論されているものもあり、ご存知の方には退屈だったかもしれません。今回取り上げたテクノロジー以外にも続々と新たなテクノロジーが生まれていますが、少しでもご興味を持って頂ける皆様には、平昌オリンピックの傍ら(オリンピックのようにすぐに決着はつきませんが。。)本ブログにて引き続き今後のテクノロジー競争に注目頂けると幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございました。Nissho Electronics USAではシリコンバレーから旬な最新情報を提供しています。 こんなことを調べてほしい!などございましたら問い合わせページよりぜひご連絡ください。

この記事を書いた人

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Nobuyuki Komatsu

2004年、日商エレクトロニクス入社。JuniperやBrocade、Viptelaなどネットワークを軸としたインフラ製品の事業推進や新規ベンダー立ち上げに関与。2017年10月よりサンノゼ赴任。シリコンバレーで得られる最新の情報を発信しつつ、新たなビジネスモデル開発に向け日々奮闘中。2020年現在の担当領域は、クラウドやフィンテック、インシュアテックなど。バスケットボールとキャンプが趣味。

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