シリコンバレーテクノロジートレンド 2020.10.22

【Gartner IT Symposium/Xpo 2020速報】2021年戦略的テクノロジートレンドの要点を一挙に公開!

2020年10月19日から22日にかけて「Gartner IT Symposium/Xpo 2020」がオンラインで初開催されました。トレンドを把握する上では重要な指標となるガートナーの発表ですが、今年は特に新型コロナウイルスの影響で先の予測がしづらくなっていることもあり、より注目している方も多いのではないでしょうか。そのような中、毎年恒例となる「戦略的テクノロジートレンド」について、2021年のポイントを一挙にご紹介していきたいと思います。

2021年の3大テーマ

「人」がテクノロジーの中心(People centricity)

  • 新型コロナウイルスの影響で人々の働き方やライフスタイルが大きく変化したが、従業員や顧客などの「人」がテクノロジーの中心であるということは変わらない。
  • 顧客体験の向上はもちろん、従業員やパートナーの満足度もテクノロジーの力で向上させていくことが重要になる。

場の独立(Location independence)

  • 新型コロナウイルスはリモートワークを急速に加速させた中、テクノロジーを活用して顧客、従業員、パートナーがリモートでも安全にビジネスができるような環境を整えることが重要。

迅速かつ柔軟な判断(Resilient Delivery)

  • AIなどのテクノロジーを駆使しながら、何事においても素早く決断ができる仕組みと組織体制を作り運用していくことがビジネスの加速に繋がる。

 

これらの3つのテーマはお互いに独立して動くというものではなく、お互いの関係性をより強めることが重要だといいます。これらのトレンドを組み合わせることが今後5年の組織の新たな指針になるとのことでした。

発表のなかでは、各テーマごとにキーワードが3つずつ挙げられていました。ここからはそれぞれのキーワードで発表された要点を紹介していきます。

テーマ①:「人」がテクノロジーの中心(People centricity)

あらゆる行動をデータ化(Internet of Behaviors)

2025年末までに、世界人口の半数以上が少なくとも1つのIoBプログラムの対象となるだろう

  • IoB(Internet of Behaviors)とは、様々なソースから人の行動を認識し、そのデータを取得すること。
  • ウィズコロナ時代であれば、マスクを着用しているかどうか、ソーシャルディスタンスを保っているか、熱がないかなどについて、画像認識技術などを活用してデータを集めていく。
  • IoBは個人を特定するような情報も含まれるため、社会的・倫理的に重要かつ広範な意味合いを持つことになるため、実践する組織は明確な目的と慎重な対応が必要。

トータルエクスペリエンス(Total Experience)

2024年までに、トータルエクスペリエンスを提供する企業は、顧客と従業員の満足度指標において競合他社を25%上回るだろう

  • トータルエクスペリエンスとは、ユーザーエクスペリエンス(UX)、カスタマーエクスペリエンス(CX)、エンプロイーエクスペリエンス(EX)、マルチエクスペリエンス(MX)の4つをそれぞれリンクさせることにより、関係者にとって総合的により良い体験を生み出すこと。
  • 組織が全ての体験を最適化すれば、競合他社との差別化を図る絶好の機会を得ることになる。例えばウィズコロナ時代に対面での会話をなるべく避けたい場合、顧客と従業員がコミュニケーションを取るためのモバイルアプリなどのツールを提供することで、お互いのタッチポイントを増やし(マルチエクスペリエンスを提供)、カスタマーエクスペリエンスとエンプロイーエクスペリエンスの両方を向上させることができる。
カスタマーエクスペリエンス(CX) :顧客体験
ユーザーエクスペリエンス(UX)  :ある特定のサービスを利用した際に得られる体験
エンプロイーエクスペリエンス(EX):従業員体験
マルチエクスペリエンス(MX)   :顧客とのタッチポイントを増やし関係性を向上させる体験

プライバシーを強化したデータ分析(Privacy-Enhancing Computation)

2025年までに、大企業の50%は取り扱うデータのプライバシーを強化するだろう

  • IoBなどで入手した大量のパーソナルデータは、データ分析を行いビジネスに活用される。
  • それらのデータを取り扱う企業は、収集から分析までのプロセスの中でプライバシーを強化することが欠かせない。
  • 差分プライバシー、準同型暗号、秘密計算技術、ゼロ知識証明などの技術を駆使しながらプライバシーを強化していくことが求められてくるだろう。
差分プライバシー(Differential Privacy)
準同型暗号(HE:Homomorphic Encryption)
秘密計算技術(SMC:Secure Multiparty Computation)
ゼロ知識証明(ZKP:Zero Knowledge Proof)

テーマ②:場の独立(Location independence)

分散型クラウド(Distributed Cloud)

2025年までに、50%以上の企業が分散型クラウドを利用してビジネスモデルの変革を行うだろう

  • 分散型クラウドはパブリッククラウドのオプションとして提供される。
  • 今後はパブリッククラウドをメインとして利用しながら、レイテンシーや地域固有の法律が関係するデータ配置の問題などに対応するため、IoT Edge CloudやGlobal network edge cloudなど物理的に異なる場所に設置されているクラウド環境を利用していくことになるだろう。
  • 分散型クラウドを利用することで、コストのかかるプライベートクラウドの利用を避けられるとともに、ビジネスを加速させる環境を整えることができる。

場所を問わないオペレーション(Anywhere Operations)

2023年までに、40%の組織がバーチャルな体験とリアルな体験を融合させることで、従業員の生産性と顧客対応を向上させるだろう

  • 「デジタルファースト、リモートファースト」をキーワードとし、従業員に対してどこからでも働く環境を与え、どこにいても顧客をサポートできることが重要になってくる。
  • ただ単にデジタルを活用してリモートで働く環境を提供するだけではなく、セキュリティとガバナンスを守りながら、顧客と従業員に対して独自の付加価値を付けた体験を提供することが求められる。

サイバーセキュリティメッシュ(Cybersecurity Mesh)

2025年までに、サイバーセキュリティメッシュはデータ通信の半分以上をサポートするだろう

  • サイバーセキュリティメッシュとは、柔軟性と信頼性の高いセキュリティ制御のための分散型アーキテクチャのこと。
  • 新型コロナウイルスの影響で、従来物理的にオフィス内にあった様々なデジタル資産従業員の自宅などオフィス外で利用されるようになった。そのためそのデジタル資産を守るセキュリティがより重要になっている。
  • 働く環境が急速に変化している状況下で組織のビジネス変革を阻害することなく、安全なセキュリティ環境を整えることが求められている。既に大手企業ではある程度の規模で整えられている。

テーマ③:迅速かつ柔軟な判断(Resilient Delivery)

データに基づいてビジネスを構築(Intelligent Composable Business)

2023年までに、データに基づいてビジネスを構築し、意思決定プロセスを柔軟に見直すことができる組織は、新サービスの実装スピードで競合他社を80%上回るだろう

  • 新型コロナウイルスの拡大のようにビジネスに大きなインパクトを与えるような出来事が起きた際、従来の意思決定プロセスでは素早く変化に適応することができず遅れをとってしまう。
  • 意思決定プロセスを再構築する際、分析されたデータへのアクセスができること、そのアクセスしたデータに対して新たな洞察力を加えられること、そして素早く意思決定ができるプロセスが作られていることが重要。

AIエンジニアリング(AI Engineering)

2023年までに、少なくとも50%のITリーダーはビジネスにAIを活用した予測を導入をすることに手を焼くだろう

  • AIのプロジェクトはスケーラビリティ、ガバナンスなど様々な問題に当たり失敗することが多い。
  • ビジネスで活用ができるAIシステムを構築するためには3つのコアな柱(DataOps、ModelOps、DevOps)が必要。この3つの柱を理解し取り組まなければAIのシステム構築は困難になるだろう。
  • DataOps :データの利用者が必要なデータを必要な時にすぐに入手できるように、データ利用者と管理者が協調できるような社内文化・組織作りを行う手法。
  • DevOps:ソフトウェア開発と運用を組み合わせ、システム開発のライフサイクルを短縮し、ソフトウェア品質の高い継続的デリバリーを行う手法。
  • ModelOps:開発工程(開発→検証→改善→実装)のスピードを最大限に高めながら、質の高い結果を出すことを目指す手法。

ハイパーオートメーション(Hyperautomation)

2024年までに、企業は自動化技術の活用と再設計された業務プロセスを組み合わせることで業務コストを30%削減することができるだろう

  • ハイパーオートメーションとは、AI、ML(機械学習)、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)などのツールを利用して、人間が行ってきた作業を自動化すること。
  • 既に多くの企業が社内の定型業務については自動化の取り組みをしているが、社外を含むビジネスパートナーとの業務プロセスまで広めると、まだまだ自動化できるプロセスは多い。今後はビジネスパートナーとも協力しいながら自動化の範囲を拡大していく必要がある。
  • もちろん、対象とする範囲を拡大することで発生するリスクも大きなものになるが、この流れは止めることはできない。

NisshoUSA注目ポイント

今回のガートナー戦略的テクノロジートレンドでは、新たなトレンドが発信されたというより、昨年のトレンドから新型コロナウイルスの影響で生まれた新たなキーワードを組み込んだ印象です。その中でも私が注目をしたのはハイパーオートメーションです。これは昨年のトレンドにも含まれていたものですが、社内の業務プロセスだけではなく、ビジネスパートナーと協力して自動化する範囲を広げていくという考えには新たな気付きを得ることができました。受発注や請求書などの業務処理プロセスでは社内外の一連のプロセスを自動化できる可能性は十分にあり、そのシステム連携をさせる部分に新たなビジネスチャンスがあるのではないかと感じます。

多くのエグゼクティブが参加する本イベントですが、来年はリアルな場で参加してみたいと思っています。

関連記事:【Gartner IT Symposium/Xpo 2019速報】2020年戦略的テクノロジートレンドのトップ10・前編

 

最後までお読みいただきありがとうございました。
Nissho USAは、シリコンバレーで35年以上にわたり活動し、米国での最新のDX事例の紹介や、斬新なスタートアップの発掘並びに日本企業とのマッチングサービスを提供しています。紹介した事例を詳しく知りたい方や、スタートアップ企業との協業をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

Shuichi Noto

この記事を書いた人

Shuichi Noto

2008年にユニアデックス入社。5年間の大手通信キャリア向けの営業を経験した後、日商エレクトロニクスへ入社。大手OTTの情報システム部門向けにVDIやWeb会議などの働き方改革を促進するソリューションの販売に従事。2019年よりNissho USAに赴任。お客様のビジネスを共創&サポートできるようなソリューションの発掘を目指し日々活動中。担当領域はITインフラ全般、ヘルスケア業界、地域創生など。趣味はゴルフとサッカー。

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