こんにちは。Nissho Electronics USAの小松です。
今年もガートナー主催一大イベントであるGartner Symposium/ITxpoが10月に米フロリダ州、オーランドで開催されました。今回のテーマはAI。AIとはいっても今までとは異なる捉え方でトレンド予測されていました。
そこで今回は実際に参加して得た、イベントで発表されたばかりのAIトレンド予測をご紹介します。
昨年のイベント記事:ガートナー、2018年度版ITトレンド10大予測
Gartner Symposium/ITxpoとは
Gartner Symposium/ITxpoは、業界最大手IT調査機関のガートナーが主催する大規模な年次ITカンファレンスです。
同社トップ・アナリストがITに関連する将来を予測し、実現に向けてITリーダーがなすべき施策を提言します。
今年は世界各国より約4万人が参加し、さらに注目度を増しているイベントです。
また、イベントセッションの多くはトレンド調査や企業コンサルを担当するガートナーアナリストによるものなので、ITトレンドの予測だけでなく、企業のあり方、組織論といった経営者向けのトレンドを把握する上でも有効です。事実、参加者の半数以上が企業のエグゼクティブやCIOなどの経営層なのです。
それと同時に上層レベルでのコネクション形成に役立ちますので、協賛企業を含む参加者は効率的に企業の意思決定者と面会できることも特徴の1つと言われています。
デジタルトランスフォーメーション実現のために注目度が高まるAI
昨今、あらゆる業界でデジタルトランスフォーメーション(Digital transformation; DX)が注目されています。デジタルトランスフォーメーションとは「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という概念です。
そしてガートナーはデジタルトランスフォーメーションに欠かせない要素の一つとして、AIをあげています。
ガートナーは毎年、AR/VRやブロックチェーン、5G等業界で期待されている様々な最新技術の成熟度や社会への浸透度をハイプサイクルを用いて予測します。今年発表されたハイプサイクルでもAIに関連する技術が数多く取り上げられています。
(ハイプサイクル上にある無数の点はAIが活用されている様々な技術領域を示している)
また、企業によるAIの導入もその成果が確実に認められつつあります。
AIをビジネスに活用すると聞くと自分たちの仕事が減ってしまう、奪われてしまうという懐疑的な印象が強いと思います。しかしながら実際にAIを導入した企業に聞くと、むしろポジティブな印象を持つことがガートナーの行った調査でわかったのです。
この意識調査の対象になったのは、既にAIを導入した企業と、導入していない企業でした。既にAIを導入した企業ほど、AIに対してポジティブな印象を持つという結果になったのです。
つまり、いざ導入してみるとAIのおかげでビジネスが軌道にのり、AIが処理してくれる業務時間を他の作業に充てられるようになります。これにより従業員の生産性が上がるという結果につながり、AI導入に対する印象が変わっていったということでした。
(既にAIを活用する企業では、うち約80%が業務への影響もなく、ポジティブな印象を持つ)
AIはさらに知能を増強させ、企業の生産性向上につながる技術として期待されるという意味で「Artificial Intelligence(人工知能)」という捉え方から「Augmented Intelligence(拡張知能)」とも呼ばれており、ますますAIに注目が集まっているのです。
多くのITカンファレンスでデジタルトランスフォーメーションが取り上げらていますが、Gartner Symposium/ITxpoではそれを実現するための欠かせない存在としてAIに大きな期待が寄せられていることが伺えます。
関連記事:ビックデータやAIが活躍する米国プロスポーツビジネス
AI分野における未来予測
AIに関するトレンド予測は本カンファレンスでも注目のセッションで発表されました。
今回は「拡張知能」、「企業文化/プライバシー」、「商品/市場」の3分野で予測がたてられましたが、そのうちAI分野を筆者抄訳にて簡単に振り返りたいと思います。
1.AI分野の人材は2020年まで成熟しないまま。計画的な人材確保が鍵。
AI技術発展のための人材確保は追い付いていないのが現状。必要なスキルセットを持ったごく限られたメンバーにおいてしかビジネスが成功しないのです。
AIスキルセットを身につけることはその複雑さ、困難さゆえ、まるで錬金術や魔法であると例えられています。求められることとしては、機械学習やアプリケーション開発等、多岐にわたるスキルの習得です。さらに、これらのスキルは技術改善のためどんどん変更されていくため、常に新しいスキルを更新し続けなければならないのです。
故にAI分野での成功の秘訣は、データサイエンティストやアナリスト等、企業内でAI人材をいかに確保していくのかロードマップを予めたてておくことだと提言されています。
2.AI顔認識技術の発達により2023年までに行方不明者捜索効率が80%向上する。
今後カメラによる街の管理が一般的になる言います。街の各区画に設置されたカメラの台数は一人あたり平均15台、顔認識によって管理される時代がくるという予測です。
カメラの台数を増やすことで顔認識データを取得できるエリアが拡大します。データ数が増えると認識精度が向上するため、より広範囲に及ぶ正確な顔認識を使ったサービスが可能になります。このような技術は行方不明者の発見に役立つことが期待されているのです。
一方でプライバシー問題にも関わるため、その対応については課題が残ると言います。
関連記事:【初心者必見】2018年おすすめAI系カンファレンス
3.医療への活用により2023年までに緊急救命室を訪れる患者が約2千万件削減。
米国では年間約1億3千万人もの患者が緊急救命室を訪れます。うち35%が事故によるもの、残りの65%は慢性疾患の治療が大半と言われています。
この慢性疾患の治療にAIを活用したリモートケアを活用していくことで、緊急救命室利用者を減らすことが期待されています。ウェアラブル端末やアプリの導入が進み、ここにAIが活用されることで、病院に行かなくてもリモートで治療を受けられる患者の数が増えることが期待されています。
その仕組みとは、AIを活用したリモートケアが患者のヘルスチェックデータ分析等、医師側の対応効率化に貢献するためです。
これに伴い、医療分野でのAI企業の買収が加速することになるとも予測されています。
(ガートナーより毎年発表される戦略的トレンド予測トップ10)
4.2022年までに約40%の新たなアプリケーション開発プロジェクトは、その開発チームにAIを活用した仮想的な共同開発者を備えている。
上述した通り、AIに対する捉え方は人工知能から拡張知能へとが変化しています。アプリ開発現場でも拡張知能を積極活用する傾向が増えていくという内容です。
従来、AIを活用したソリューションやサービスをつくるためには、専門のデータサイエンティスト(ビッグデータなどを取り扱い、解決策を練る人)とアプリ開発者による共同開発が一般的なアプローチでした。
しかし、今後は専門のデータサイエンティストの役割をAIが担うようになるというのです。例えば、AmazonやMicrosoft、Google等が提供するMachine LearningサービスといったAIサービスを利用することでアプリ開発者だけでサービスを作ることが可能になります。もっというとコードを書けない筆者でも、アプリを開発できるということです。
下の図ではシステム開発に関わる職種がAIに変わっていく推移を示しています。まずは簡単なQAテストやコード生成がAIに変わるとあげられています。
そして最終的にデータサイエンティスト、ビジネスアナリスト、ソリューション開発等、従来専門的な役職として企業が確保していたリソースまでもがAIによって補完されていくことになります。
AIという強力なパートナーを備えることで、企業の業務改善や生産性向上に大いにつながることになると言われています。
(各開発段階に必要な知識レベルに応じてAIの導入が何時頃になるのかを表した図)
まとめ
今回紹介したAIに関するトレンドからも読み取れるように、今後様々なAI活用事例が増えていくことが予測され、AIを取り巻く技術進歩による功績は大きいように感じます。
Nissho Electronicsでは最新のテクノロジーを活用した商材、ソリューション提案に強みを持ち、コンサルティング、インテグレーションからサポートまで様々な分野でお客様のお役に立つサービスを提供しております。
ご興味がある方は是非問い合わせページよりご連絡ください。
また、こちらのメディアではシリコンバレーから旬な最新情報をお届けします。こんな情報を発信してほしいという要望もございましたらお問い合わせください。
最後までお読みいただきありがとうございました。