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Blog 11/24/2019 Gartner | ガートナー | トレンド | 戦略的テクノロジー Mizuki (ENO) Enomoto

【Gartner IT Symposium/Xpo 2019速報】2020年戦略的テクノロジートレンドのトップ10・後編

「Gartner IT Ssymposium/Xpo 2019」で発表された「2020年戦略的テクノロジートレンドのトップ10」。後編では「Smart Spaces」を実現するトレンド6~10の解説と、昨年発表された2019年戦略的テクノロジートレンドからどう発展したのかを紹介する。

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トレンド6:エッジ機能の拡張(The Empowered Edge)

“2023年までに、企業が生成したデータの50%以上が、データセンタもしくはクラウドの外部で作成・処理され、2019年の10%未満から増加するだろう。“

エッジ・コンピューティングは、情報処理やコンテンツ収集の際、遠隔地にあるサーバではなく利用者の近くで処理をすることで、上位システムへの負荷や通信遅延を解消することを指す。エッジ機能の拡張とは、エッジデバイスの処理能力が向上することでスマートスペースの基盤を形成していき、主要なアプリケーションにおいてデバイスと利用者を近づけていくという概念だ。

現在のエッジデバイスは、スタティック・プロセス、階層化アーキテクチャ、スタティックなネットワークという特徴を持つが、2025年に向けてエンパワードエッジは、アダプティブ・プロセス、フォグ/メッシュ・アーキテクチャー、ダイナミックなネットワークへと進化する。

現在はこの概念は製造業や小売業などの特定業界向けのIoTシステムで活用されているが、今後すべての業界に広がっていくと予測されている。ロボット、ドローン、自律走行車などのエッジデバイスが、このシフトを加速させるだろう。

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トレンド7:分散クラウド(The Distributed Cloud)

“2024年までに、クラウドサービスプラットフォームの大部分は、必要とされる場所でサービスを提供するようになるだろう。“

分散クラウドは、パブリック・クラウドサービスを、自社データセンターの外のエッジに分散させ、サービス提供者であるパブリック・クラウドベンダーが、そのオペレーション、ガバナンスに責任を負うことを指す。

これにより、地域固有の法律が関係するデータの配置の問題など、多くの企業におけるコンプライアンス問題が解決されることになる。このような集中型のパブリッククラウドから分散型のパブリッククラウドへの進化は、クラウドコンピューティングの新しい時代への転換期とも言えるだろう。

トレンド7-min

 

トレンド8:自律的なモノ(Autonomous Things)

“2025年までに、新しく製造される乗り物の12%以上は、レベル3以上の自動運転のハードウェア機能を備えるだろう。”                                               *レベル3:条件付き運転自動化

自律的なモノとは、ロボットやドローン、自動走行の車や船、自立型家電など、これまで人間が担ってきたタスクをAIを利用して自動化する物理デバイスを指す。

現在は、主に鉱山や倉庫などの特定の環境で使われているが、技術が向上して規制が整備されされ、社会的受容性が高まるにつれて、公共スペースで頻繁に見られるようになると予想される。しかしながら、自律的なモノは、人間の脳に取って代わるようになるとは言えず、限られた範囲での目的に最も効果を発揮するに留まるだろう。

「自律的なモノ」を代表するテクノロジーの一つとして、光センサー技術のLiDAR(ライダー:Light Detection and Ranging)がある。これは、レーザー光を対象物に照射してその散乱や反射光を観測することで、対象物までの距離を計測するもの。自動運転の目とも呼ばれ、自動運転システムに必要不可欠なコアセンサーである。ヨール・デベロップメント調査によると、2018年時点での世界における市場規模は$1.3B(約1,300億円)で、年成長率29%で急速に成長し、2024年には$60B(約6,000億円)になるとのこと。

IoT

 

トレンド9:実用的なブロックチェーン(Practical Blockchain)

“2023年までに、ブロックチェーンに触発された技術は、世界における毎年2兆ドル(200兆円)の商品やサービスの移動を支援し、追跡をするだろう。“

ブロックチェーンは、分散台帳もしくは分散型ネットワークを実現するテクノロジーを指す。ブロックと呼ばれる、連続的に増加する順序づけられたレコードのリストによって構成され、一度記録すると、ブロック内のデータを変更することができない。これにより、ビジネス・エコシステム全体にわたって信頼性をもたらし、価値交換を実現することで各種の業界を再構築すると見込まれている。

現時点でブロックチェーンは、スケーラビリティや相互運用性の低さ等技術的問題があり、企業に導入できるほど成熟していない。しかしながら、創造的破壊と収益創出の大きな可能性については評価されてしかるべきだろう。

ユースケースを見てみると、決済、監査証跡、資産追跡、ID管理と続き、既に商品化や本番実装のフェーズに入りつつあることが分かる。また、今後ブロックチェーン活用が成功するには、ソリューション先行ではなく、デマンド先行だというのがポイントになるだろう。

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トレンド10:AIセキュリティ(AI Security)

“2022年を通して、すべてのサイバー攻撃の30%で、学習データ・ポイズニング、AIモデルの盗難、または敵対的サンプルを活用するだろう。“

AIセキュリティは、AI技術をセキュリティ分野に応用していくことを指す。人間の手では処理することのできない膨大なデータを学習し、通常と異なるパターンを検出するなどのセキュリティ対策をAIで実施するというものだ。自律的なモノの活用は、ビジネス変革を実現する絶好の機会だ。しかしそれと同時に、IoT、クラウド、マイクロサービス、スマートスペースでインテリジェンスに接続されたシステムには、新たな攻撃ポイントとなる潜在的なセキュリティ脆弱性も生まれることになる。

AIを実装していく上では、学習データを準備し、機械学習をさせてモデルを作成後、完了したAIをサービスに組み込むためにプログラミングするというステップがあるが、このステップにおいて次の3つの脅威が存在している。

  1. 学習データに悪意のあるタグがついたデータを挿入することで、誤動作を狙うデータポイズニング
  2. MLサービスに対する入力値とそれに対応する出力値をもとに、MLモデルを複製してしまうモデル盗難(Model Theft)
  3. モデルに認識される画像(エグザンプル)にある種のノイズを加えることで、画像の被写体を誤認識させる敵対的サンプル(Adversarial example)

これらの脅威に打ち勝つためにも、セキュリティリーダーは、①AIを搭載したシステムの保護、②AIの活用によるセキュリティ防御の強化、③攻撃者によるAI悪用の予測の3つの領域に焦点をあてる必要がある。

AI Security

 

2019年戦略テクノロジートレンド トップ10からどう発展した?

昨年の戦略テクノロジートップ10と比較してみると、昨年から引き続きランクインしているのは、⑥エンパワードエッジ、⑧自律的なモノ、⑨ブロックチェーンの3つ(グレー線)。

2019年のトレンドに挙がっていたデジタルツインは、2020年には①のハイパーオートメーションの進化の結果として、デジタルツインを生成することになると位置づけられた。また拡張アナリティクスは、特定領域におけるMLでのデータ分析の自動化をアウトプットすることで、データサイエンティストがいなくても利用できることから、①ハイパーオートメーションと③専門知識の民主化へ枝分かれして組み込まれている。(ピンク線)

さらに2019年のAI主導の開発は、開発の民主化をもたらし、2020年には③専門知識の民主化に統合された。イマーシブ・エクスペリエンスは、AR/VRなどのイマーシブ(没頭型)な体験を含み②マルチエクスペリエンスへ発展。デジタル倫理とプライバシーは、信頼の危機を生み、企業における⑤透明性とトレーサビリティの必要性を駆り立てる。(緑線)

Strategic Technology

3つの新しいトレンドと消えた「量子コンピューティング」

一方、2020年に新しく入ったのは、④人間の拡張、⑦分散クラウド、⑩AIセキュリティの3つだ。それぞれに対する考察を以下に簡単にまとめる。

人間拡張:SFを想像する身体機能の拡張イメージが強くあり、直接的には企業の活動に関係なさそうにも思えたが、知的能力を拡張するテクノロジーも進化しており、今後の人材育成戦略にも関わってくる重要な領域だと認識した。

分散クラウド:利用する企業視点では、超低遅延大容量のアプリケーションをサービスプロバイダ側の運用管理のもと活用できることから、企業におけるデジタルビジネスの幅が広がる。通信事業者側にとっても新しい収益になることからも期待が大きい。

AIセキュリティ:企業がDXを推進する上でAI活用は欠かせない要素の一つになるが、同時に攻撃する側もAIを活用した攻撃を仕掛けてくるということを念頭においたセキュリティ対策が重要であることを認識した。

逆に、昨年発表のトレンドから消えたのが、量子コンピューティング。これは、少し時期尚早だったのかもしれない。ちょうどつい先日、科学誌「Nature」に掲載された論文にて、Googleが独自開発した量子コンピュータが、世界最速のスーパーコンピュータでも一万年かかるとされる処理をわずか200秒で実行したと報告されたが、まだまだ研究領域で様々な手法が提唱されており、どれが実用化の決め手となるかは見いだせていない様子だ。

まとめ

言い回しや表現の違いはあれど、昨年と比較してテクノロジートレンドの変化がもたらす方向性に大きな違いはない。ここ数年のデジタルトランスフォーメーション(DX)の文脈で語られるデジタルによる新しいビジネスへの挑戦や変革を推進するものだ。

ガートナーは、著しく変化するテクノロジートレンドを、上手に捉えて、適切な用語を生み出しているが、大切なことは、この戦略的テクノロジートレンドを理解して終わることなく、トレンドの変化の本質を見極め、どう解釈し、自社におけるイノベーション推進にどう活用していくのかを決めて実行すること。当社としても少しでも皆さんのイノベーション推進に貢献すべく、アクションしていきたい。

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Mizuki (ENO) Enomoto

Mizuki (ENO) Enomoto

1997年、日商エレクトロニクス入社。エンタープライズ分野の顧客を中心に、ニュータニックス、マイクロソフAzureなどのローンチに携わる他、国内クラウド関連ベンチャーへの出資を担当。 2008年-11年、ボストン、サンノゼ駐在時にクラウドの黎明期を肌で感じて以来、スタートアップ企業のアントレプレナーシップとパッションに魅了されている。2019年5月、2回目となる駐在で、Nissho USAプレジデントに就任し、セレンディピティを信じながら日々奮闘中。趣味は、ファミリーキャンプとゴルフ。Follow @mizumizu72

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