シリコンバレーテクノロジー 2016.01.25
TEXT:Team Nelco

もう知らないでは済まされない、インダストリー4.0で知るべき6つのこと

こんにちは、Nissho Electronics USAです。2005年頃にWeb 2.0という言葉を聞いてから、早10年が経とうとしています。その間、ガラケーからスマートフォンへ、コミュニケーションが一方通行のサイトから双方間のソーシャルメディアへ、そしてソフトウェアに加えてハードウェアがスマートになる等、私たちを取り巻くデジタル環境は大きく変化を遂げています。

そしてここ最近、インダストリー 4.0 (Industry 4.0) という言葉が注目を集めています。今回の記事では、インダストリー 4.0とは何なのか、世界でどういった動きがあるのか、私たちにどのような変化をもたらすのかを見ていきます。

1. インダストリー 4.0とは何か

インダストリー4.0という言葉をご存知でしょうか。インダストリー4.0とは「第4の産業革命」とも言われるもので、工場内、流通、小売のあらゆるものにセンサーを取り付け、ネットワークにより情報をつなげ、集まった情報を人工知能を活用して処理することで、最適化を図るものです。

Googleトレンド(Googleが提供する、Web検索のデータからキーワードのトレンドを調べることができるツール)を使って調べると、「インダストリー4.0」は2014年の秋頃から急速に日本での検索数が増えており、新しいバズワードになろうとしています。

簡単に言ってしまえば、スマート工場の時代になります。工場同士や工場と流通、小売までがネットワークで繋がることで、効率化が進みます。その効率化も、人間が判断するのではなく、人工知能が判断して行われます。

効率化によってコストが下がり、より安く製品を製造できたり、すべてがインターネットで繋がることで、少量多品目の製造が可能になると期待されています。

2. ドイツが提唱した世界中の工場をつなげる戦略

インダストリー4.0は、ドイツが国家戦略として取り組んでいます。2013年にドイツ政府の戦略の中で言及され、何百億円もの投資を行っています。ドイツといえば、BMWやボッシュ、シーメンスなど、優れた工業製品を生み出す国というイメージが強いと思います。そのドイツが、インターネットを存分に活用した、次の世代の新しい産業をリードする意思を明確に国家として示しています。

インダストリー4.0を実現するためには、1つの国の中だけでなく、世界中の工場をつなげる必要があります。私たちは、中国やインドネシアなどで製造された製品を当たり前に使っています。また、iPhoneの中身の部品は実は日本製が多いということからも分かるように、世界中で作られた部品を組み立てて製品が作られています。特に部品数の多い自動車は、1台の車に必要な部品数が約3万個と言われています。世界中の工場で生産された部品が組み合わせられて製品が作られているのです。

このため、通信規格などを、国を超えて世界的に標準化することが求められています。標準化がうまくいけば、連携が行いやすくなりますし、標準化をリードした国は大きな利益が生まれます。標準化においてリードしているのが、ドイツとアメリカです。

規格標準化には、政府の働きかけも大きな影響を及ぼします。例えば、世界の工場と呼ばれる中国と連携して、自分たちの規格を採用してもらおうと思うと、政府間での交渉も必要になってくるため、企業や団体で対応できるレベルを超えています。

3. 全く新しい概念ではないが、標準化がキーとなる

「日本でも似たようなことをやっている」と思う人がいるかもしれません。

確かに、インダストリー4.0は、全く新しい概念ではなく、製造業にITを導入しようとする流れの中で出てきたものです。2012年にGE(ゼネラル・エレクトリック)が発表した「インダストリアル・インターネット」のように、ほぼ同じような概念もあります。

日本では、トヨタの生産方式が世界的にも有名なように、工場の効率化や自動化が進んでおり、すでにITの利用も進んでいます。日本にはキーエンスやファナック、オムロンなど工場の自動化分野の有力な企業がありますし、コマツのようにうまくITを活用して成長している企業もあります。このように日本では、工場内での自動化や、企業のサプライチェーンでの自動化は進んでいます。しかし、全世界の工場を流通、小売を繋げようとする動きの中では、存在感を十分には示せていません。

これらに対して、インダストリー4.0は、国を挙げて、大企業も中小企業も含めて、すべてを繋げようと「標準化」に取り組んでいるところが特徴です。相互に繋がるシステム、デバイスが増えれば増えるほど、メリットが高まることは直感的に分かることです。例えば、ごく単純化した例を挙げると、AndroidのスマートフォンとiPhoneの間でメッセージがやりとりできないと大変不便です。それと同じで、新しく部品を調達しようとした工場が、規格が違うために自社のシステムと連携できないのは問題になってきます。

また、データが集まれば集まるほど、データを分析して得られる価値は増すことから、どれだけ大量のデータを集められるかが鍵となっています。このことからも、システムを連携させることが重要になってきます。

4. IoTが重要な役割を果たす

インダストリー4.0は、IoTなしでは語れません。インダストリー4.0の背景には、IoTの爆発的な普及があります。2020年には、インターネットにつながるモノの数は、250億台から500億台になると予想されています。250億台として、単純に計算しても全世界で1人あたり4台のデバイス、先進国ではもっと多くのデバイスを保有することになります。このように考えてこの数字が現実的ではないと懐疑的になるのは誤りです。

250億台の中には、工場などで産業用に利用されるセンサーなども当然含まれているからです。工場内、流通、小売で、多数のセンサーを取り付けて、そのデータを一ヶ所に集めて分析する取り組みが進んでいきます。これらのインターネットにつながったセンサーは、日常生活では目にしたり意識する機会はほとんどないかもしれませんが、私たちの生活をより便利にしてくれます。

センサーは小型化、高性能化していますし、先日の記事でご紹介したように、IoTのプラットフォームもここ数年で急速に発展してきています。このようなテクノロジーの進化が、インダストリー4.0の発展を後押ししていくと考えられます。

関連記事: 「IoTプラットフォーム」の覇権競争 – その分類と注目プレイヤー10選

5. データを活用した付加価値の提供、サービス化が進む

IoTと共に、人工知能の発達もホットな話題です。先日の記事、「人工知能 (AI) 革命が奪う4つの職業」で紹介したように、ディープラーニングが1つのブレイクスルーとなりました。

IoTから集まった莫大なデータを、人工知能を使って解析し、それを付加価値を付けて提供したり、製品の改善に役立てる動きも出てきています。

先ほど述べたGEの「インダストリアル・インターネット」の例をご紹介しましょう。GEは、航空機、ガスタービンや電車を製造していますが、実際に利用者がどのように使っているのか、製品がどのような状態になっているかは、これまで分かっていませんでした。そこで、インターネットにつながったセンサーを取り付けることで、その情報を収集し、アフターサポートや製品開発に役立てています。

まず、センサーから集まったデータを元に、製品の性能の改善につなげることができます。また、何か異常が起こった時や、想定外の利用方法をしているため製品の性能が発揮できていなかったり、故障に繋がる危険があることを検知し、利用者に連絡することができます。また、データを人工知能により分析することで、故障時期や、メンテナンスが必要な時期の予測も可能になります。

これまでは売りっぱなしに近かった工業製品も、このようなアフターサービスで付加価値をつけることが増えていくと考えられます。

また、データの活用の事例として、日商エレクトロニクスでは「くるま-i」と呼ばれる車両運行管理テレマティクスクラウドサービスを提供しています。

くるま-iでは、車両やドライバーごとに、日時・位置・急ブレーキ・急発進・速度超過などの情報が秒単位で収集されます。さらに、連続運転時間、総運転時間、総移動距離、アイドリング時間といった運転関連情報もサーバーに自動で蓄積されます。これらのビッグデータをお客様の状況に合わせて地域・部署・期間・時間帯といったさまざまな切り口で分析し、その結果をメール添付でお知らせすることで、企業の運転におけるリスク傾向を「見える化」するサービスを提供しています。

6. 百兆円単位の経済効果が期待されるが、普及するのには時間がかかる

インダストリー4.0では、ほぼ全ての産業が対象になると言っても過言ではありません。まさに、全ての企業がIT企業になる時代が近づいています。アクセンチュアは、2015年1月のレポートで、インダストリー4.0を率先する 産業でのIoT活用により、次の15年間で、全世界で14.2兆ドル(約1700兆円)の経済効果があると試算しました。

このように、経済効果は驚くべき額になると予想されますが、すぐに普及すると考えるのは現実的ではありません。

工場や生産設備は、何十年に渡って使われるもので、古い仕組みの工場をすぐにスマート工場に置き換えることはできません。また、世界的な標準化もまだまだ始まったばかりの状態と言えます。

インダストリー4.0における中心企業「シーメンス」のPeter Herweck 氏も、「インダストリー4.0を20年のスパンで考えている。20年後に振り返ると革命が行ったように感じられるが、それは膨大な数の進歩を積み重ねた結果である」と述べています。

Nissho Electronics USAの取り組み

IoTというと、スマートウォッチ、スマートホーム、コネクティッドカーという印象が強いのですが、産業用IoTの普及が進んでいます。そして、これまでITとは縁が薄いと考えられてきた分野も含め、ほぼ全ての分野にIoTと人工知能の波が押し寄せてきます。今後劇的な環境変化が多くの産業分野で起こると考えられており、どのように最新のテクノロジーを活用するか、既存の仕組みをいかに時代に合わせて切り替えていくかが、多くの企業にとって課題となってくるでしょう。

Nissho Electronics USAは上記のようなトレンドを把握の上、来るべきデジタルビジネス時代に備え、様々な観点からシリコンバレーで調査を行い、日商エレクトロニクスと連携し、お客様に対し最適な提案をしてまいります。お問い合わせフォームより、どうぞお気軽にお問い合わせください。

 

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