イノベーティブ・スタートアップ 2019.09.20

【InsureTech Connect 2019】参加者必読!直前に注目すべきインシュアテックスタートアップ3選

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こんにちは、Nissho Electronics USAの小松です。

本日は「InsureTech Connect 2019」直前ブログ第二弾のご案内です。

第一弾では「おさえておきたい保険業界トレンド」として投資や異業種参入動向等、全体的な観点でお伝えしました。今回は「InsureTech Connect 2019(以下ITC2019)」開催前より注目されているスタートアップ3社をご紹介します。

ITC2019 初開催「Resiliency Insurance Innovation Challenge」

今年から新たに「InsurTech Connect(ITC)」と「Insurance Information Institute(I.I.I)」による新たな取組み「 Resiliency Insurance Innovation Challenge」がスタートします。

Resiliency Innovation Challenge-min

Resiliency(レジリエンシー)は、一般的に、病気・不幸・困難・苦境などからの回復力、立ち直る力、復活力という意味がありますので、保険という観点では、自然災害や、何か重大なトラブルが発生した場合の対応力や復元力、つまり損害保険に該当します。 このチャレンジは、主に損害保険業界において、革新的なテクノロジーやツールを最大限に活用し個人や企業等がリスクに対する準備や対策がしっかりと出来るよう、その最前線にいるスタートアップをITCとI.I.Iがサポートするというものです。

2018年は歴代4位の保険損害額

ドイツのミュンヘンに本社をかまえる保険会社”Munich RE”によれば、昨年度2018年の全世界の保険損害額は、約80ビリオンドル(110円換算で日本円にして約9兆円)に及ぶと言われています。自然災害を例にあげると、米国ではハリケーンや山火事、日本ではゲリラ豪雨や台風等による影響がそれにあたります。この数値は、1980年以来、歴代4位の損害額に該当します。2017年に至っては、約10兆円を超えると言われトップです。いずれもとてつもない金額です。また、ここ最近注目度が増しているサイバー犯罪被害によるサイバー保険も忘れてはいけません。

ITCによればここ10年の平均保険損害額は、1980年代に比べると残念ながら約660%もアップしているとか。これはやはり異常事態であり、今回の「 Resiliency Insurance Innovation Challenge」設立にはこのような背景がありそうです。

では、このような異常事態に対応すべく、損害保険分野の注目スタートアップとしてノミネートされた3社をご紹介します。

1. WeatherCheck, Inc.

2017年に米ケンタッキー州ルイビルで設立されたスタートアップです。WhetherCheckという企業名だけあり、天候や気候に関する何かのサービスかな?と推測を持たれるかもしれません。 同社は、複数の専門機関によるデータソースから、独自アルゴリズムを活用し、雹(ひょう)や霰(あられ)による不動産への損害を予測分析、モニタリングするソリューションを提供します。住所情報を入力するだけで、該当不動産の屋根等がどのくらい劣化しているか等を判別します。

これは保険会社、被保険者双方にメリットをもたらします。共通するのはタイムリーに不動産の状態を正確に把握することができるという点です。損害保険会社にとって大切なことは、被保険者からの申告に対する初動の早さとアフターケアです。具体的には被保険者からの保険金請求処理時の損失調整費用削減、新規契約時の査定品質向上等。一方、被保険者にとっても自分の資産がどのレベルの保険に加入すればいいか、いつ保険申告をすれば良いのか等イメージがわきます。要するに、いかに保険料を安くおさえ、インシデント発生前に対策をとり、発生後に早期に保険金を受領するかです。これら一連のプロセス高速化は非常に重要ですね。同社はこれらをサポートするわけです。

また、シリコンバレーで最も有名なアクセラレーターの1つであるY Combinatorの2019年初冬投資プログラムに参加しているという点もポイントです。成功実績の多い投資家からのサポートはスタートアップにとっても心強いですし、彼らのユーザからの期待もあがります。

2. True Flood Risk by Think Geohazards, Inc.

2017年に米ニューヨーク州の高級住宅地ブロンクスで設立されたスタートアップです。先程の1社と同様、少し企業名からサービスが推測できるかもしれませんね。 同社は、独自アルゴリズム/マシンラーニング技術を活用し、グーグルマップのストリートビューや3rd PartyのAPIとも連携しながら、住所単位で不動産データを分析、洪水への脅威診断ソリューションを提供します。

TrueFloodRisk-min

私自身知りませんでしたが、全く同じストリートに位置しており、お隣同士という位置関係にあるにも関わらず、洪水による影響は全く異なるそうです。つまり、加入してもらう、もしくは加入すべき保険はお隣同士でも別物であるべきということです。これは所謂、海抜や地面の高さが影響するわけですが、同社は各不動産のFFE(First Floor Elevation)、つまり1階の高さを正確に診断し、保険会社が被保険者に提案すべき保険、被保険者が加入すべき保険選びをサポートします。一般的に米国ではBFE(Base Flood Elevation)と呼ばれるエリア毎に基準となる地面の高さによって各不動産の保険料が設定されているのですが、その値は個別個別に厳密にチェックすると正確ではありません。すごく極端にいうとどんぶり勘定で保険料が設定されているわけです。

そのため、被保険者にとってはもっと安く適正な保険に加入できるかもしれないし、保険会社は実態より安価な提案をしてしまっている可能性があることになります。同社のツールは、このような課題を解決し、お互いにとっての正確な保険料算定をサポートします。勿論それだけでなく、いざ洪水がおこった際のリスク分析にも役立ちます。

ちなみに、同社はシリコンバレーの人気インキュベーターの1つであるPlug&Playからのサポートを受けています。

3. Cowbell Cyber, Inc.

2019年カリフォルニア州プレザントンで設立されたスタートアップです。ここ最近ホットなトピックであるサイバー保険をサポートします。

米国大手金融であるキャピタル・ワンの1億人分の顧客情報漏洩は記憶に新しいと思います。Cowbell Cyberによると、今日、サイバーアタックは、より巧妙化、複雑化しており、頻度という観点では、約40秒間に1回、年間では約7.5億回ものペースで発生しているとのこと。情報漏洩による業務妨害は、企業やお客様に甚大な被害をもらたすことは明らかです。サイバー保険はそのような対策に役立つ保険になります。

Cowbell Cyber-min

サイバー保険の課題の1つに、膨大な数のサイバー犯罪に保険会社によるアンダーライティング、所謂、査定が追い付かないことがあげられます。そのため、同社はディープラーニングや数理科学等を活用し、保険対象となる脅威をスピーディに評価し、リスクの重大性を分析することでそのプロセスを高速化するソリューションを提供します。また、被保険者にとっては保険料の最適化に役立つとのこと。Cowbell(カウベル)は、保険対象が脅威とリスクにどれだけさらされているかをマッピングすることを意味するようですね。

2019年設立ということもあり、現時点で公表されている情報はかなり限定的ですが、分かりやすく言うと、自動車保険におけるテレマティクス、生命保険におけるFitbitのように重要な存在であると思って頂ければ宜しいかと思います。

同社は、保険業界で活躍するメンター主体のアクセラレーター、GIA(Global Insurance Accelerator)からサポートを受けています。

求められるのは、リアルタイム性と透明性

ご紹介した3社の選考は、9月25日(木)14時よりスタートする「Resiliency Challenge:The Finalists Present. The Winner is Crowned」セッションで行われます。お楽しみに。

個人的な所感になりますが、ノミネートされた3社から推察するに今保険業界に求めらているソリューションは”リアルタイム性”と”透明性”を兼ね備えたものではないでしょうか。 世の中には既に大量のデータが山のようにあふれていますが、それをどのように活用すべきかは未だ発展途上です。そのため、AIやマシンラーニングを通じて、リアルタイムにデータを吸い上げて分析し、それぞれの業態にあわせてうまく適応させていくことが求められます。保険業界におけるそれは、保険査定、契約、申告、支払いという中で考え得る膨大なプロセスをいかにスピーディに最適化するかです。

また、透明性という観点も忘れてはいけません。これは保険会社と被保険者間プロセスの透明性をさします。全ての利害関係者にとり曖昧さを排除することで、Win-Winの関係が生まれるのです。勿論これは保険業界に限りませんが、保険という複雑で分かりづらい商品を取り扱う上では非常に重要なポイントです。

最後までお読み頂きありがとうございます。今回ITC2019で初チャレンジのこの取組、いずれも重要なテックスタートアップですが栄冠が誰の手に渡るのか楽しみです。ITC2019に関する続報は、イベント参加後に、またご紹介したいと思います。

Nissho Electronicsは最新テクノロジートレンドも視野に入れた、デバイスにとどまらない提案と構築・保守・運用の一貫したソリューションをご提供しています。サービスの詳細はこちらからご覧いただけます。また、弊社へのお問い合わせはこちらのフォームよりお気軽にご連絡ください。

 

この記事を書いた人

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Nobuyuki Komatsu

2004年、日商エレクトロニクス入社。JuniperやBrocade、Viptelaなどネットワークを軸としたインフラ製品の事業推進や新規ベンダー立ち上げに関与。2017年10月よりサンノゼ赴任。シリコンバレーで得られる最新の情報を発信しつつ、新たなビジネスモデル開発に向け日々奮闘中。2020年現在の担当領域は、クラウドやフィンテック、インシュアテックなど。バスケットボールとキャンプが趣味。

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