シリコンバレーテクノロジー 2016.01.07

なぜ今、Software Defined WAN(SD-WAN)が必要とされているのか?2 – WANイノベーションの必要性

こんにちは。Nissho Electronics USAの新田です。

さて、今回は「なぜ今、Software Defined WAN(SD-WAN)が必要とされているのか」の第二弾。前回述べたWANにおける課題対処と経営層からの要望を全て満たす、WANイノベーションについて述べたいと思います。

新しいWANのかたち

前回のブログで述べたパブリッククラウド多用化に伴うネットワークの最適化は、まず従来のネットワークトポロジーからサービストポロジーを優先することからはじまります。

従来型のネットワークトポロジーは増加するクラウド帯域幅要件についていくための柔軟な接続性に欠けていることから、新しい企業アプリケーションロールアウト時に多くの時間・手間・コストを発生させていました。ここにおいては企業のWANサービス管理欠如が最も大きな課題であり、インフラ変更は通信事業者依存かつ数週間から数ヶ月の時間を要することも原因となっています。

かつ、ルーティングおよびセキュリティーコントロールプレーンが個々に動作していることなどからも、包括的にEnd to Endのサービスレベルマネージメントを行う事は至難の業であり、当然個々のアプリケーション毎に異なるサービスレベルの設定かつリアルタイムの状況把握を行うことは現実的ではありませんでした。

ネットワークからサービス指向WANに移行するためには、コントロールプレーンを物理的なトポロジより切り離しクラウド上にて運用すること、かつSD-WANとしての重要要素であるブロードバンドも信頼性の高い回線として利用する上で、セキュアでフルメッシュのIPSec暗号化を行い、面全体のコンフィギュレーションやVPNポリシーを一括管理/制御できることが重要となります。

これがSD-WAN或いは既存WANと組み合わせた新たなハイブリットWANの概念と位置づけられます。

SD-WANによりできるようになること

急速なクラウドサービス導入に伴い、企業内ネットワーク担当者はWAN設計における課題対処や経営層からの要望を満たすため、以下の点に対し強くSD-WANへの期待を高めています。

  • 高い柔軟性と拡張性: 従来型WANアーキテクチャでは、本課題を解決することは至難の業です。
  • シンプルかつコントロール可能: 負荷を増やすネットワーク設計変更となりかねない分散型かつ複雑なソリューションによる解決ではなく、いかに包括的でシンプルに、かつ自社でネットワーク全体を運用管理できるかが課題です。
  • コスト削減: L2/L3専用線やVPNを中心としたネットワーク運用にブロードバンドやLTE回線の利用を見直すことで、コストは年間30-50%近くの削減に繋がる期待もあります。

SD-WAN導入は時期尚早?

SD-WAN(Software Defined WAN)とは、コスト削減を実現しワイドエリアネットワーク(WAN)よりも柔軟な接続を提供するネットワークです。Open Networking User Group(ONUG) 2015年春の会合を切っ掛けに注目されるキーワードとなりました。確かに1年も満たない間でSDN/NFV市場においても最も注目を浴びるキーワードになるなど、急激な認知拡大が進む領域であり、未だ商用導入は時期尚早ではないか?という話も聞かれます。

GartnerアナリストのDanellie Young氏とBjarne Munch氏によると、Gartner社のHype Cycle for Networking and Communications, 2015にて、SD-WANは”Innovation Trigger(イノベーションの引き金)”を通過し、”Peak of Inflated Expectations(過剰期待の頂)”段階に上昇しているという評価をしています。ただし、重要な点は”Plateau of Productivity(生産性の台地)”に2-5年という非常に短いサイクルで達する、つまり主流採用が起こり、広範な市場に適用されるということがうたわれていることです。

これは、Gartner research directorのAndrew Lerner氏が、自身のブログ”Hybrid is the new WAN“で「私が話す多くのクライアントは、自社のWANが抱える大きな課題(まず第一にコスト、性能、可用性)を言及しているので、SD-WANは正に捕まえにくい「キラー」SDN事例である可能性がある」と言及していることからも肯けられます。

技術議論のみならず、顧客が抱える課題を解決するSD-WANは技術者による興味よりも必要性にかられたソリューションであることから、早い時期での導入が進むことが期待されます。

GAPが認めたSD-WAN分野におけるViptelaの強み

日商エレクトロニクスが取り扱う「Viptela」はクラウド事業者によるサービス展開が加速化した2012年に設立されました。設立にあたり、FounderはFortune500のCIO及び意思決定者と徹底討議を行い、WAN環境におけるDisruptive Innovation(破壊的イノベーション)が必要であるというViptelaが目指す展開に誤りがない事を確認し、Cisco,Juniper,Alcatel-Lucent等の主要企業でリーダーシップをとりかつIP/Network Securityを理解し尽くした開発陣によりソリューション提供に向け開発が進められ、2014年中旬にStealthmodeから脱却、製品供給を発表しました。

そして、2015年11月にNew Yorkで開催されたONUGにてGAPがViptela製品を同社WAN環境の革新に採用したことを発表しました。既に同社の千拠点近くの店舗にViptela製品を導入し、世界で最も大規模なSDN導入商用事例として運用開始されています。

同社がSD-WAN導入検討を開始した際に掲げたキーワードは、Network should be a platform that delivers Revenue-Generation innovations for stores。特に、以下の3項目につき重点的に評価を行い、競合他社多数の中Viptelaを選定しました。

  1. Fully Routed Secure Overlay with centralized Policy Management
  2. Segmentation for various business initiatives
  3. Easy to maintain templates for zero-touch deployments and mass-configuration changes

主要なL3専用線をデュアルのブロードバンド或いはLTE回線に置き換え大きく回線コストを低減したことに加え、支払取引・電子看板・ビデオコラボレーション・ゲストWi-Fi等をセグメント化しアプリケーション最適化を実施。更には1日で50店舗への導入を終えた簡易性については、同社が過去考えもしなかった事であると強調をしました。

さらには、従来の通信事業者もSD-WAN領域に入ってきています。上記の多様な顧客層に対してマネージドサービスの提供を行うことを目的としていますが、特に、自社回線を有さない海外拠点における運用メリットは非常に高いと評価されております。ViptelaのSingtelとの提携はまさにこの流れを実証しています。

Gartnerの発表にもある通り、SD-WANが初期段階でありまだ成長分野であることは間違えありませんが、Return on Investment(ROI)メリットと千拠点近くの大規模商用ネットワークで運用されている事実に加え、エンタープライズのクラウドサービスの採用加速化はSD-WAN導入検討を後押しすることが予想され、市場の予想を裏切る早い展開で広範への本格導入が進むことが期待されます。

SD-WANを必要とする顧客層

では、日本ならびにアジア市場におけるSD-WAN需要はどのように捉えると良いのでしょうか?顧客セグメント毎に現状からSD-WANへの需要と適用方法につき考えてみたいと思います。

1. 中小企業:

企業内情報基盤は重要ながらも、IT担当者が少なくかつWAN回線をそれ程多く利用していない顧客層です。WANを情報のパイプとして活用することが主流であることから、各種事業者によるクラウドサービスも含めた包括的なサービス提供に対する需要のほうが強く、Dashboardで情報基盤全体の一部であるネットワークが正常に稼働していることが確認できれば満足する方が多いと考えられます。 その為、SD-WANに対する期待は事業者のマネージドサービス内で効果的にコスト削減に繋がり、情報基盤変化にあわせ事業者側にて増減双方のネットワーク最適化が行われることへの期待が高いと考えられます。

2.大手企業(10-100拠点):

WAN回線コストも比較的大きな比率を占め、削減が求められている部類の顧客層です。クラウドも含めた情報基盤は自社で積極的に関与(設計・運用)を行いますが、リソース面からもWANについては手間の掛からない管理を望んでいます。とは言え、マルチキャリアのWAN運用やクラウドサービス多用化に伴うネットワークトポロジの再考・サービス設定の自動化等も必要としており、自社でWANマネージメントを抱え込むか或いは従来通り通信事業者依存とするか悩まれている方が多いと考えられます。 その為、SD-WANによりできることに対し大変強い興味を示されており、自社によるSD-WANの導入か或いはマネージドサービス型のSD-WANサービスの選択が別れるのではないかと考えられます。

3.超大手企業(100拠点以上或いはグローバル企業):

この部類の顧客は、ユビキタスアクセス、高スケール暗号化、効率的なインターネットアクセス、クラウド対応アプリケーションの心地よいユーザエクスペリエンス、マルチポイント接続性、多用なネットワークトポロジーの適用、そしてB2Bパートナーネットワークなど、表面的な要望だけでも膨大な数に上り、他にもまだまだ多数の必須用件があげられます。

かつ、当然のことながらも用途ごとにL2/L3 VPNや専用線、ブロードバンド、LTE等多様な回線サービスを利用しており、マルチキャリアも考慮した制約を受けない自社によるSD-WANの導入に強く興味を示す顧客層となります。

その為、SD-WANに対する期待は最も高く、自社によるSD-WAN導入を目指し数拠点におけるPOC検証から商用導入に向けた展開を積極的に検討されるのではないかと考えられます。

日商エレクトロニクスが提供するハイブリットWANソリューション

日商エレクトロニクスは、上記全てのお客様層に対し、お客様が複数拠点のネットワークコネクションを安全かつまるでユーティリティかのように扱うことを可能とし、ネットワーク基盤を意識せずにアプリケーションとサービスに対する更なるイノベーションの展開を支援するため、Viptela製品を中心に当社サービスをあわせ提供させて頂きます。

Viptela製品ならびに関連サービスの詳細につきましては、日商エレクトロニクスWEBを参照の上、お問い合わせ下さい。

この記事を書いた人

この記事を書いた人

Manabu Nitta

1998年、日商エレクトロニクス入社後、 ネットワーク分野に関わる営業、マーケ、商品企画開発を経て2013年4月より3年間サンノゼ赴任。 2016年日本帰国後、日本法人設立前のNewRelicやZoomなどSaaSビジネス立ち上げに加え、自社ビジネスモデルの変革にも挑戦、マルチクラウド環境の設計運用簡素化に繋がるサービスビジネスの立ち上げを行う。 2022年4月より2度目のサンノゼ駐在となり、先進技術のみならず、オープンイノベーションをベースとした新たなる当社価値の提供、お客様との事業共創に向け活動中。

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