シリコンバレーテクノロジー 2019.01.22

CES2019にみる自動運転技術がもたらす生活空間革命

こんにちは、Nissho Electronics USAの小松です。

2019年米国コンピュータ業界は世界最大の家電見本市Consumer Electronics Show(以下CES)で幕を開けました。1月8日~1月11日の期間中、開催地である米国ラスベガスは約18万人の来場者で賑わいを見せ、CES一色となっていました。

私自身はCES初参加になりますが、例年話題にあがる自動運転に関するアップデートが多くみられ、メディアでも多く取り上げられていました。実現に向けたテクノロジー開発が着々と進むなか、同時に自動運転実現後の世界についても議論が繰り広げられています。

そこで今回は、自宅や職場に続く、次なる生活空間として注目を浴びる車内空間がどのように変化するのか、私自身が目で見て感じた3つの注目テクノロジーに触れながらご紹介したいと思います。

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注目1.スマホやタブレットもいらない自動運転が実現する生活空間

個人的に最も感動したのはKia社(韓国の自動車メーカー)が出展していたReal-time Emotion Adaptive Driving(以下R.E.A.D.)というAIを活用するテクノロジーです。搭乗者の感情や状態、顔の表情、心拍数等の変化に応じて車内環境(照明や音楽、温度など)を調節してくれるという優れものです。

また、運転速度や車内環境などを意図的に変更したい場合、車載カメラに向けて身振り手振りすることで車載システムに指示することができます。

デモ展示では、実際に搭乗者の目と指先の動きで前方画面に指示が出せるといった実演も行われました。スマホもタブレットも勿論不要です。

この技術はまだコンセプト段階ではありますが、実現されれば運転はもちろん、その他の操作に気をとられることが少なくなります。これにより車は運転するための空間ではなく(移動しているのに)家のような生活空間として利用することが可能になります。

(搭乗者の身振り手振りにより前方画面が指示を認識した後、システムが反応している様子)

注目2.車内にいながら自然光を感じられる健康空間

次にとりあげたいのはOSRAM社(ドイツの老舗照明メーカー)です。皆さまはHuman Centric Lightning(HCL)をご存知でしょうか。直訳すると”人を中心に考えた照明”です。簡単に言うと、本来人が必要とする自然光を人工的につくりだすことを指します。

自然光は人の健康状態やパフォーマンスの維持、向上に重要であることが徐々に研究で明らかになっているようで、OSRAM社はそのHCLを活用したソリューションを提供します。実際にOsram Chronogy Chair(自然光を生成する照明付きの椅子)がデモ展示されておりました。この技術はオフィスや病院に加え、自動運転車内に至るまで様々な活用事例が想定できると言います。

例えば、スポーツ業界への活用として、アスリートが海外など遠征した際の時差ボケ防止といった体調管理に役立てることができます。Osram Chronogy Chairの照明を調整することで、時差を感じにくくするという仕組みです。

このように、システムに囲まれた車内にいても屋外と同様の環境を実現できるようになるのです。どの国に移動しようが、生活のリズムを整えることで最大のパフォーマンスを出し続けることができるのであれば、画期的な技術です。

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注目3.車内にいるのを忘れるくらい没頭できるエンタテインメント空間

最後にとりあげたいのは、SONY社展示の360°Reality Audioという音響デバイスです。

昨今、IT関連イベントでは「Immersive(没入型)体験」というキーワードを良く目にします。まさにその場にのめりこむ、没頭してしまうほどリアリティのある体験を実現できることを意味します。

自動運転が実現すると、車内での余暇時間が増え、映画、音楽、ゲーム等エンターテイメントが欠かせなくなってくると言われています。没入型体験を実現するために欠かせない要素の一つとなるのが音響です。

実際に展示で行われていたデモで体験をしてきました。スピーカーは前方机上に1台置いてあるだけにも関わらず、音響は360°、四方八方から聞こえてくるような不思議な感覚に陥る優れものでした。

デモ会場はマンションの1ルームくらいのスペースでしたが、この技術を車内で活用すれば、車内にいながらまるで大画面スクリーンのある映画館にいるといったような素晴らしい体験ができるのでは?と勝手ながら想像してしまいました。

(前方説明員の隣に置かれた360° Reality Audio。このたった1台で360°空間の音響を実現している。)

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まとめ:誰もがビジネスのドライバーになれる自動運転実現後の世界に今後も注目

今回、自動運転実現後の世界を考察する中で感じたことは、誰もが活躍できるビジネスチャンスがあるということでした。自動運転が実現すれば、あくまで車体はプラットフォーム、悪くいえばただの箱になりうる存在です。

さらにそこが生活空間になるのであれば、自動車という概念は消えさり、自動車以外の業界で活用されていたサービスやアプリケーションがそのプラットフォームの中に組み込まれていくことになります。例えば車内が食事や睡眠をする自宅のようになったり、仕事をする職場となったりしていくということです。上述したエンタテイメントや健康業界等も注目すべき業界です。

これに加え、5Gの登場でインフラが拡大すると様々なデバイスや技術が今まで以上に、その可能性はさらに広がるでしょう。そのため、想像もしなかった業界企業の参入が実現したり、はたまた従来自動車業界で活躍してた常連がビジネスを閉業する可能性もあります。今後のビジネス競争が益々気になる注目業界です。

CESは家電見本市と言われるだけあり、消費者向け家電のイノベーションやトレンド視察には最適なイベントです。こういった家電も今や自動運転技術やAI、ロボティクス等、ICTテクノロジーとの融合が目まぐるしいスピードで進んでおり、ますます注目度を増しています。

CES関係者によると、出展社、視察者増により、今後は来場者数を制限するとも言われているようです。近隣ホテルやチケットがこれ以上値上がりしないことを願います。

おまけ:ラスベガスメイン通りでLyftとAptivの自動運転タクシー乗車体験

Lyft社(ライドシェアサービス企業でUber社の競合)とAptiv社(自動車部品メーカー)が共同開発している試験サービスである自動運転タクシー(有料)を今回初めて使ってみました。今回、車内での撮影はNGでした。

現在ラスベガスでは30台の自動運転車(セダン型BMW 5シリーズの白と黒)が走行しており、Lyftアプリで配車が可能です。完全な自動運転実現はまだ先ですし、試験運用中のため運転手席と助手席に1名ずつ、Aptiv社員が乗車した状態での配車となります。

一人は運転補助役、もう一人は説明員兼データ収集役という形でした。なので1台の配車につき乗客最大3名まで利用可能です。

ちなみに、我々の乗車料金(通常のLyft乗車料金と変わりません)は全てLyft社が回収、Aptiv社は料金の変わりに自動運転に関するデータを回収します。データをマネタイズする流行のビジネスモデルです。

現状は予めプログラミングされた道路に沿ってしか走行できず、手動運転と自動運転が混在していますが速度制限や車線変更等、問題なく乗車でき満足しました。是非ご出張機会等、チャンスがあればお試しください。

Nissho Electronicsは最新テクノロジートレンドも視野に入れた、デバイスにとどまらない提案と構築・保守・運用の一貫したソリューションをご提供しています。また、Nissho Electronics USAでは米国より最新トレンドを日本へ発信しております。弊社サービス概要の詳細はこちらからご覧いただけます。また、弊社へのお問い合わせはこちらのフォームよりお気軽にご連絡ください。

この記事を書いた人

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Nobuyuki Komatsu

2004年、日商エレクトロニクス入社。JuniperやBrocade、Viptelaなどネットワークを軸としたインフラ製品の事業推進や新規ベンダー立ち上げに関与。2017年10月よりサンノゼ赴任。シリコンバレーで得られる最新の情報を発信しつつ、新たなビジネスモデル開発に向け日々奮闘中。2020年現在の担当領域は、クラウドやフィンテック、インシュアテックなど。バスケットボールとキャンプが趣味。

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