イノベーティブ・スタートアップ 2022.11.16

【Webinar記録】スタートアップの祭典Disrupt2022 フィードバックセミナー

2022年10月、TechCrunch主催の大型カンファレンス「Disrupt 2022」が、アメリカ・サンフランシスコにて開催されました。コロナ禍の影響で3年ぶりのリアル開催となり、期待が高まった今年のDisrupt。本ウェビナーでは、Disrupt 2022に参加した米国駐在4社(日商エレクトロニクス・BIPROGY・ネットワンシステムズ・NTTデータ)の社員が、それぞれ注目したスタートアップや新トレンドを解説しました。

 

参加メンバー紹介

Nissho Electronics USA Corporation(日商エレクトロニクス)
Shuichi Noto

2013年に日商エレクトロニクス入社。大手OTTの情報システム部門向けにVDIやWeb会議などの働き方改革を促進するソリューションの販売に従事。2019年よりNisshoUSAに赴任。現在FutureofWork、Sustainability、AI、Network領域に注力して活動中。

BIPROGY USA, Inc.(BIPROGY)
Tomohiro Katazawa

BIPROGY株式会社(旧日本ユニシス株式会社)の北米拠点に、2018年から現地駐在員としてジョイン。テクノロジー・トレンド情報などのリサーチや、スタートアップ企業発掘などを業務として実施。

Net One Systems USA, Inc.(ネットワンシステムズ)
Toru Miyashita

ネットワンシステムズで15年の職務経験を持ち、各種ITソリューションを開発・提供。クラウドコンピューティングやサイバーセキュリティ分野に強みを持ち、ITアーキテクトとして活躍。2021年よりNetOne USAに着任。

NTTData,Inc.(NTTデータ)
Tomohiro Ohtani

主にR&D部門で、先進技術を活用したビジネス開発業務に従事。交通シミュレーションやAIを軸とした研究開発、スタートアップと連携したソリューション開発を実施している。2021年よりNTTデータのシリコンバレーオフィスに着任し、有望スタートアップの探索・連携を主なミッションとして活動中。

Net One Systems USA, Inc.(ネットワンシステムズ)
Shigeharu Yoshida ※ファシリテーター 

エンタープライズ企業向け営業戦略の分野で経験を積んだ、ITプロフェッショナル。顧客との関係構築に深いコンピテンシーを持つ。セキュリティ分野のサービス開発においてもリーダーシップを発揮し、NetOneのSOCビジネスの立ち上げに携わる。2019年よりNetOneUSAに赴任し、ビジネス開発に従事。

Tech Crunch/Disruptの概要

Disruptは、世界規模のスタートアップメディア「Tech Crunch」が開催している、大規模テクノロジーカンファレンスです。特に会期中イベント「Startup Battlefield 200」は「スタートアップの祭典」とも呼ばれており、選ばれた20社のスタートアップ企業が、10万ドルの優勝賞金をかけて競い合います。

今年は、5月に「Tech Crunch Japan」「Engadget Japan」が閉鎖となった影響もあってか、Disruptは縮小開催となっています。

Nissho Electronics USA
注目スタートアップ

Shuichi Noto

Nissho Electronics USA・能任からは、そのなかで注目した1社のスタートアップと、同じ領域のスタートアップ2社、そしてGenerative AIのトレンドを紹介しました。

1社目:GPT‐3を活用した広告スタートアップ「Omneky」

Omneky(オム二キー)は、文章生成言語モデル「GPT‐3」を活用した広告領域のスタートアップです。2018年にアメリカ・サンフランシスコで設立され、創業者は千住光さんという日本人です。シードステージのスタートアップとして、「Startup Battlefield 200」の20社にも選ばれています。Bill GatesやJeff Bezosが所属するベンチャーキャピタル「Village Global」からも表彰を受けている、今注目のスタートアップです。

機能1:広告の分析・学習

世界中のWebサイトやソーシャルメディアの広告データを収集し、AIが分析。文章の内容や長さ、広告の色など、各広告のターゲットに対して最適な内容を分析し、学習し続けます。

機能2:広告の自動生成

宣伝するプロダクトやサービスのデータ(パンフレットなど)を読み込ませることで、クリエイティブな広告イメージやキャッチコピーを自動生成。生成された広告はそのまま使うことができるだけでなく、修正したい部分を指定すれば、その部分だけ新たに自動生成することも可能。できた広告は、GoogleやFacebookといった複数のプラットフォームに配信できます。

機能3:広告の動的な変更

配信した広告をリアルタイムで分析し、その結果に合わせて広告内容を修正。クリック率をはじめとした各種指標においてより高いパフォーマンスを出せるよう、動的な変更が可能です。

GPT‐3を利用した他スタートアップとの比較

Omnekyの他にも、GPT‐3を活用したスタートアップは今非常に多く出てきています。それらのスタートアップが、GPT‐3の得意分野である文章自動生成に特化しているのに対し、OmnekyはGPT‐3の特性を生かしつつ分析や配信、動的な変更まで行えます。また、今回のピッチでOmnekyと比較されたスタートアップは5社でしたが、そのうちの2社を以下でご紹介します。

比較1社目:AIによる自動記事生成を行う「Jasper.ai」

ブログのトピックスや記事のトーン、ターゲットユーザーなど、全6項目を入力するだけで、AIが記事を自動生成するサービス。2013年にアメリカ・オースティンで設立されたスタートアップで、すでにシリーズAをリードし資金調達に成功。ユニコーン企業となっています。サービスは日本語にも対応済み。

比較2社目:広告キャッチコピーやコンテンツを自動生成する「Copy.ai」

eコマースの商品説明や広告のキャッチコピーなど、短い文章を自動生成するのが得意。アメリカ・メンフィスで2020年に設立されたスタートアップで、Sequoia CapitalやTiger Global Managementから資金調達を行っています。

Generative AIのトレンド・所感

今回取り上げた文章生成モデルの総称、Generative AIの、トレンドについてお話します。Bessemer Venture Partnersは、「AIを使用して生成されるオンラインコンテンツは、今後10年以内に1%から50%に到達する」と予想しています。確かに、こうしたサービスが生成した文章は、人間が書いた文章と同じかそれ以上の精度を誇っていますし、GoogleやMetaもこうしたサービスを開発しているので、私もこの予想は非常に信頼性が高いと思っています。

また、Generative AIにはSequoia Capital Partnerも注目しており、先日Sonya Huang氏もTwitterでGenerative AIに触れています。その結果、たった1週間でGenerative AIに関するランドスケープが大幅にアップデートされました。すでに多くのプレイヤーが、Generative AIを活用してサービスを提供しているということです。

私は3年半前からシリコンバレーで活動しているのですが、当時はあまりビジネスに活用できるGenerative AIのスタートアップはなかなか見つかりませんでした。しかしここ半年や1年の間で、OmnekyやJasper.aiのようなスタートアップが多数出てきています。アメリカはもちろん、この波はきっと日本にも来るでしょう。

BIPROGY USA
注目スタートアップ

Tomohiro Katazawa

BIPROGY USA・片澤さんからは、「比べてみる」というテーマでスタートアップ4社をご紹介いただきました。

1社目:Caper AI(比較対象:RAYON LABS)

Caper AIはスマートショッピングカートを提供しているスタートアップで、ショッピングカートに決済や画像認識機能、スケール機能などを搭載しています。この領域では急成長して有名になった企業です。

Caper AIと比較するのはRAYON LABSというスタートアップです。Caper AIはショッピングカートそのものを提供しているのに対し、RAYON LABSはショッピングカートにアドオンする形のPOSレジやタブレット、カメラセンサーといったシステムを提供しています。「後からアドオンできる」「コストを抑えられる」という点が、新しいサービスです。

2社目:pancake(比較対象:IKEA)

比較対象のIKEAは、Webアプリを利用することで、自分の部屋の家具配置やデザインができるオンラインサービスを提供しています。また、ARを利用した空間デザイン・空間配置も可能です。

pancakeも、部屋のデザインから家具のデリバリーまでを提供するサービスです。pancakeの場合は、オンライン上でデザイナーと通話して予算や好きなデザインを伝えることで、一緒に好みの部屋を作っていく「リモートデザイン」を利用できます。家具はその人の希望に合ったものを約30社から選ぶことができ、購入・デリバリーまで提供しています。リモートデザインは1回129ドルと中~高価格帯ユーザーをターゲットにしており、「ZOZOTOWNの家具版」という印象を受けました。

3社目:airrange(比較対象:Office365&Excel)

比較対象のOffice365&Excelについては、日本企業でも利用している所が非常に多く、もはや「使わざるを得ない」という状況ではないでしょうか。いろいろとワークツールも出ていますが、結局は「Microsoft連携ができているか」が重要なのが現状です。

それに対しairrangeは、Excelに特化したノーコードとコラボレーションツールを提供しています。Excelのアドオン機能として提供されており、ユーザーが抽出したいデータの選択やデータのグラフ化が、ノーコードで簡単に選択できるようになっています。また、クラウドを経由することで、シートの一部分だけをシェアすることも可能です。インタラクティブなサービスですし、Excelがベースということで、日本にもなじむサービスではないでしょうか。

4社目:3veta(比較対象:Shopify)

3vetaは、SaaSなどのサービスを売るための、マーケットプレイスを作成するツールです。一方、コロナ禍で急成長したShopifyは、サービスではなくモノを売るための、マーケットプレイスビルドツールです。事業者が簡単にeコマースを始められるよう、Webサイトから決済、デリバリーまでをプラットフォームとして提供しています。

それに対して3vetaは、サービスを売るマーケットプレイスに必要な、デモスケジューリングやビデオコール、決済などを組み合わせて作成できるようになっています。例えば、Calendlyで予約を取って、当日にはZoomで通話するという一連の流れを、3vetaなら両サービスを一つの窓口から利用できます。そういう意味で、営業ツールや窓口ツールとしても利用価値がありそうです。

発表を通しての所感

今回ご紹介した各社の領域には、それぞれにメジャープレイヤーがいます。ですので、そのまま戦っていくのはなかなか難しいですが、各社しっかりとペインポイントを探してアプローチしているところが、非常に興味深かったです。スタートアップを探す時は、こうしてメジャープレイヤーと比べてみると面白いのではないでしょうか。

Net One Systems USA
注目スタートアップ

Toru Miyashita

Net One Systems USA・宮下さんからは、ITシステム管理者向けのスタートアップを5社ご紹介いただきました。

データプライバシーの保護とは

データ保護には「暗号化」「アクセス管理」「アンチウイルスソフトの導入」など、さまざまな方法があります。しかし近年では、データそのものの保護というよりも、データのなかのプライバシーをどう守るかが重視されています。例えば、AIの学習モデルを作る際、学習のために大量の顔画像が必要になったとします。この場合、顔写真のプライバシーをどう守りながらAI学習を実現させるか、ということが問題になります。1社目は、そういったデータプライバシー保護の観点から選びました。

1社目:Skyflow

Skyflowは、プライバシーデータを格納しトークン化するサービスです。格納したデータはマスキングされ、データ自体を見られないように保護されます。データを利用する際は、データを利用したい人(データアナリストなど)にとって必要な部分だけを、見えるようにすることが可能です。プライバシーを守ったまま、各種データを利用することができます。

秘匿計算とは

データプライバシーを守るうえでもうひとつ大事なのが、データを処理(学習)する際の計算方法を、暗号化するなどして保護することです。今回注目したのは、計算を複数のパーティに分散して、お互いのパーティーのデータを見られなくする「Secure Multiparty

2社目:Zenmu Tech

Zenmu Techは日本のスタートアップで、実はすでに10年ほどこうした秘匿計算のサービスを提供しています。機密情報は保護したままで実験結果だけを取得することができるため、例えばA社が実施した実験について、B社に結果だけを提供することができるため、効率よく共同開発などを進めることができます。今後、アメリカへの進出も視野に入れているそうです。

ディープフェイク(なりすまし)とは

ディープフェイクとは、ディープラーニング(深層学習)を用いたなりすましのことです。今年行われた「RSA Conference 2022」で、CEOのRohit Ghai⽒は「ディープフェイクを使ったディスインフォメーションは、人類の構造そのものを破壊しかねない」と警告していました。アメリカでは、ディープフェイクを利用した詐欺などもあり、脅威として認識されています。グラフにもある通り、消費者もディープフェイクの攻撃から保護されることを求めているようです。

3社目:Anchor Z

Anchor Zは、ディープフェイクによるなりすましを防止するスタートアップのひとつです。Anchor Zも実は日本の企業で、顔の画像だけでなく、スマホを持つ手やスワイプのスピードなど、操作時の挙動も分析する「バックグラウンド認証」を活用しています。ユーザーが意識することなく認証が終わる点がメリットで、日本でも各種銀行や厚労省が利用しています。

4社目:REALITY DEFENDER

REALITY DEFENDERもなりすまし防止のためのスタートアップで、画像や映像、音声のディープフェイクに対応しています。アジアでは台湾の銀行で利用されており、中国からのなりすまし詐欺の防止に活用しているそうです。独自のアプローチ「ensemble of models」により、リアルタイムで分析ができるため、VISAをはじめとしたパートナーシップも増えてきています。

SaaS管理とは

SaaSについては、組織での利用が年々増えています。特に大きな企業になればなるほど、使っているSaaSの数も多くなる傾向にあるようです。そして今後も、特に今SaaSをあまり利用していない組織であればあるほど、3年後の利用率が伸びるのではないかと予想されています。よって、SaaSの管理も今後より重要になっていくのではないでしょうか。

5社目:Nacho Nacho

Nacho Nachoは、架空のクレジットカードを作成することで、予算管理をしやすくするサービスです。利用しているSaaSの数が増えると、各サブスクリプションの管理も大変になっていきますが、Nacho Nachoを使うことで「無料お試し版のキャンセルを防ぐ」「同じソフトウェアの料金を2度払うことを防ぐ」といった管理の効率化が期待できます。ただし、請求書払いには対応していないため、小規模企業が対象です。

NTTData,Inc.
注目スタートアップ

Tomohiro Ohtani

NTTData,Inc.・大谷さんからは、ホリゾンタルな技術を持つスタートアップを2社ご紹介いただきました。

スタートアップを選ぶ際の着眼点

我々は、ホリゾンタルな技術を持つスタートアップの発掘を⽬的に、今回参加しました。データ&インテリジェンスやサイバーセキュリティなどの領域にフォーカスし、開発の生産性を上げるような企業と、AIに関連する動画圧縮の技術を持つ企業を、それぞれ1社ずつピックアップしました。

1社目:開発者向けのリッチな動的デバッグツール「AppMap」

AppMapは、開発者向けのリッチな動的解析ツールを提供するスタートアップです。「Startup Battlefield 200」でも、ファイナリスト5社のうちの1社でした。アメリカ・ボストンで2020年に設立されたシードステージの会社で、創業者のElizabeth Lawler氏は、DevOpsセキュリティスタートアップ・Conjurの設立者でもあります。

問題設定としては、開発時にモニタリングや安全性テストなどの、多大なコストがかかることがあります。そして、問題の特定に時間がかかることや、本番環境でのテスト時に問題があった場合はさまざまな人の対応が必要になることも、挙げられていました。

それを踏まえ、面白いと思ったポイントを3つご紹介します。

ポイント1:マップによる可視化

まず、マップを使って過程を可視化することにより、各モジュールの関係性や変数の状況などが一目で分かるようになります。状況を理解しやすくなり、そのうえで開発を進められることがメリットです。

ポイント2:動的ランタイムコード分析ツール

アプリケーションの実行を記録することで、セキュリティやパフォーマンスの問題を見つけることが可能になります。例えば、仕様にちゃんと準拠しているか、クエリがループの中で過剰に繰り返されていないかといったことを確認しながら、開発を進められます。また、APIのコールやHTTPのリクエストといった内容も、コードエディットの中で確認できるとのこと。これは初の試みで他のスタートアップに競合はいないとのことで、ご紹介しました。

ポイント3:オープンソース

オープンソースであるため、対応言語も順次増えていくことが期待されます。現在の対応言語はRuby・Python・JavaScript・Javaの4つ。ユーザー数もすでに25,000人ほどおり、VS codeやJetBrainsといった大きなマーケットプレイスでも提供されています。興味のある方は、ぜひ実際に利用してみて、その感触を確かめていただければと思います。

2社目:動画圧縮技術を提供する「Deep Render」

Deep Renderは、画像や動画を圧縮するAIを使った技術(BtoB系)を提供しているスタートアップです。2017年にイギリス・ロンドンで設立されたシードのスタートアップで、問題設定としては、動画ストリーミングサービス視聴時にフレームレートが落ちてしまうことや、ブロックノイズが現れることを提示しています。

それを踏まえ、面白いと思ったポイントを2つご紹介します。

ポイント1:従来より⾼い圧縮技術

より圧縮率が低く、美しい映像を映し出せるのが特長です。1,000万本以上の動画データセットを作成して、動画データを効率的に圧縮するアルゴリズムを学習させており、従来の圧縮技術に比べてもその伸び率が高くなっています。現在、3社の大手テック企業と有償PoCについて交渉しているそうです。なお、競合については、帯域幅の削減による動画配信コストの削減を叶えるiSizeや、ディープラーニングやマシンラーニングを使って動画を圧縮するWaveOne、大手でいうとNVIDIAが挙げられます。比較検証してみる価値はありそうです。

ポイント2:幅広いユースケースとなる可能性

こうした技術はホリゾンタルな技術として、ビデオストリーミング以外にも幅広いユースケースが考えられるのではと思っています。実は弊社でも、映像解析の技術検証を実施したことがあります。表にある通り、Brack FrameやOld QualityといったエラーをAIを使って検知する技術検証だったのですが、検知はできても、エラーによって対応手法が変わってしまうことが一つの課題だと感じていました。ですので、動画を配信する段階で圧縮しエラーの発生を抑えるというDeep Renderのアプローチは、興味深かったです。

また現在、世界の全動画データは約80ZB(ゼタバイト)にものぼるといわれています。さらに2025年までには175ZBになるといわれており、動画がさらに活用されていくことが予想されます。今後はCCTVやドローンなどのエッジデバイス、VR/ARストリーミングなど、幅広いユースケースで使われていくのではないでしょうか。

Q & A/Discussion

最後に、現地の状況報告も含めたQ & A/Discussionが行われました。

現地の状況の紹介とQ & A

吉田:今年のDISRUPTは久しぶりのリアル開催ということで、例年と比べてどのような違いがあったのでしょうか。一番長く現場でその様子を見ている片澤さんに、まずはお伺いできればと思います。

片澤:DISRUPTは毎年、サンフランシスコのモスコーン・センターで行われていて、そのなかでも大きな会場で開催されていました。今年はモスコーン・ウエストという、メイン会場よりも少し小さい会場で開催されていましたね。また、例年は会期中の3日間、出展するスタートアップが毎日入れ替わっていたのですが、今年は基本的に3日間ずっと、同じスタートアップが出展していました。規模も若干例年より縮小していましたね。

吉田:出展企業の分野に変化はありましたか?

片澤:ESG関連の企業が増えていましたね。また、宇宙に関する分野もありました。

宮下:ジャパンエリアやコリアエリア、アフリカエリアなどもありましたが、こうした国別のエリアも以前からあったんですか?

片澤:国別のエリアは前からあって、基本的には変わりはなかったです。少し国は減っていましたが。

宮下:日本が一番大きかったんじゃないかというくらい、たくさん出展していましたね。

能任:頑張っていましたよね。

吉田:TechCrunchの日本版メディアの閉鎖や買収があったことが、イベントの縮小にも影響しているのかもしれませんね。今回、テック系のお話があまり出ませんでしたが、出展企業にテック企業は少なかったのでしょうか?

宮下:そうですね、私は初参加だったのですが、エビを養殖してプロテインを作るサービスや、クール便をゼロエミッションで送れるようにするサービスなど、SIerとしては少し縁遠い内容が目立っていた気がします。

吉田:素材系の分野が多かったんでしょうか?

能任:そうですね、素材系だと我々テック企業が手が出しにくい領域で。例えば、EVが流行っていると思うんですが、自動車以外の機械も電気を使って動かしましょう、というような内容が多かったです。我々はCO2を可視化しましょうとか、データを分析しましょうという方向に行きがちなので、踏み込んだ調査や協業がしにくい領域ではありました。

大谷:「Startup Battlefield 200」のファイナリストも、結構サステナビリティ系が多かったですよね。「新しい電池を作ります」とかそういう話だったので、結構難しかったです。

現在のアメリカの状況

吉田:シリコンバレーに駐在されている皆さんから見た、現在のアメリカの状況についても聞いてみたいです。

片澤:今年は会場でウクライナの旗を配って、ブースにさしているところが多くて、やっぱり国際情勢というか…。

吉田:ウクライナのスタートアップに限らずですか?

宮下:ウクライナエリアもあったんですけど、旗は国際情勢を意識してのことかなと。

吉田:ウクライナもテック企業が多い国で、すでに有名な会社も何社かありますよね。ウクライナ発の企業も多いと思います。

能任:皆さんも使ってるかもしれませんが、僕が良く使うGrammarlyという英文法チェッカーがあって、ここもウクライナ発のスタートアップです。僕がお取引をしているアメリカ人のスタートアップの方もGrammarlyを使っているので、バリューがあるんだなと。

吉田:ヨーロッパの会社が、自分たちが英語の文法に困ったからGrammarlyを作った、という経緯が面白いですよね。ネイティブが作ったわけではないという。なのにネイティブの方も使っているという、サービスのレベルの高さを感じますね。

宮下:弊社では文字起こしアプリのOtterもよく使っています。議事録作成に使うのもいいらしいですね。今は文字起こししか使っていませんが、それでも検索がかけられたり、トレーディングに使えたりというところがすごく便利です。あとは、文章を要約してくれるとか、会議プラットフォームみたいな形になると面白そうだなと思いました。創設者の方も、「無駄な会議に参加しなくて済むよう、参加の必要があるかどうかをAIで判断できるようにしていきたい」と言っていました。

吉田:いろいろなコミュニケーションが、新たなサービスによって円滑になるといいですよね。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。
Nissho USAは、シリコンバレーで35年以上にわたり活動し、米国での最新のDX事例の紹介や、斬新なスタートアップの発掘並びに日本企業とのマッチングサービスを提供しています。紹介した事例を詳しく知りたい方や、スタートアップ企業との協業をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

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Shuichi Noto

2008年にユニアデックス入社。5年間の大手通信キャリア向けの営業を経験した後、日商エレクトロニクスへ入社。大手OTTの情報システム部門向けにVDIやWeb会議などの働き方改革を促進するソリューションの販売に従事。2019年よりNissho USAに赴任。お客様のビジネスを共創&サポートできるようなソリューションの発掘を目指し日々活動中。担当領域はITインフラ全般、ヘルスケア業界、地域創生など。趣味はゴルフとサッカー。

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