シリコンバレーテクノロジー 2022.10.20

【InsureTech Connect 2022】エコシステム構築へ動き出した保険業界

こんにちは、Nissho Electronics USA の新田です。
2022年9月20日~22日に、保険業界の年次カンファレンス「InsureTech Connect 2022(ITC2022)」が米国ラスベガスで開催されました。当社の参加は2019年以来3年ぶりでしたが、InsureTech領域を含めた保険業界がエコシステム構築へと向かっている印象を受けました。

今回は、カンファレンスで語られた内容のなかから、InsureTech領域の現状、イノベーション推進の実例、課題を箇条書きで紹介します。詳しい内容をご希望の方はぜひお気軽にお問い合わせください。

InsureTech Connectとは?

  • 世界最大の保険業界向けテックイベント。北米・欧州・アジアの各地域で開催されており、北米(ラスベガス)での開催は2016年以降6回目。
  • 2022年は昨年比で2倍規模となり50カ国より9,000人が参加。市場規模の違いはあれ、隣で開催されていたGrocery Shopが3,000人名程度の参加者だったことからも、注目度の高さが窺える。

InsureTech領域への投資額は大幅に減少するも、上場企業は増加

  • 保険は長い歴史からコンサバな業界と言われているが、それ故に改革の必要性も強く、業界規模も大きいことから積極的な技術への取り組みや投資が進んでいる。
  • 本領域への投資が活発化した2018年以降、投資額は着実に増大し続けたが、2022年には前年比42%の減少に転じた。またInsureTech上場企業10社の平均株価は2022年7月時点で上場時より74%下落 しており、これはテクノロジー領域全体における株価下落幅よりも大きい。
  • とはいえ、アフラックVCやState Farm VCなどの業界企業による積極的な投資やM&A、またFinTLV VenturesなどInsureTechに注力するベンチャーキャピタルの投資は継続しており、決して悲観するべきではない。
  • また昨年はInsureTech企業の上場が増えた。投資は控えられている状況ながらも、各社成長は続いており、黒字化につながる企業も出始めてきている。
  • そんななか現在の注目市場はサイバー保険やペット保険。テクノロジーを活用し新たなビジネスモデルに挑戦する企業も生まれている。

各社が従来の仕組みから脱却して、オープンイノベーションを推進

  • イノベーションは、既存組織・仕組みの中からは出てこない。実際に米国大手保険会社のFarmers Insurance Groupでは、 ミレニアル世代を対象としたビジネスを加速させるために、別会社に専用チームを立ち上げ、そこに全権限を委譲。その結果、新規顧客開拓や同顧客層への新たなメニュー検討に繋がった。「TAKE RISK, FAIL FAST(リスクを取り、失敗を厭わない)」という考え方が重要である。
  • 再保険(Reinsurance)の販売に強みを持ち、以前はPrudential Financialの子会社だったEverest Reは顧客理解とデータ活用に注力すべく、これまでの内製開発をパートナー開発ツールの活用とAPIによる連携に切り替えた。より明確なターゲットに的確なサービスを最適な価格で提供することを最重要事項としたほか、スタートアップへの投資を同社の事業展開強化に繋がる重要な位置付けとしている 。

アナログ作業の効率化など、ビジネスプロセス改善が課題

  • 保険手続きにおいては代理店(エージェント)が非常に重要な役割を担う。しかし複数のキャリア(保険会社)・MGA(保険免許を持つエージェント)や顧客を繋ぐなかで膨大なやりとり・情報を捌く必要性があり、これを解決するための情報管理・オンボーディングプロセスの簡素化に繋がるベンダーが乱立している。
  • 保険契約引受時手続きにはアナログ作業が多い。代理店が保険引受人(アンダーライター)業務において本来の業務に専念して専門知識・経験を発揮するには、業務効率化が欠かせない。
  • クレーム(保険求償・査定・支払い)処理も未だアナログ作業が多く、専門家による対応と業務処理の双方に改善余地がある。これは顧客満足に繋がる重要な要素であり、RPA含めソリューションは多岐にわたる。
  • 顧客・契約情報連携や分析が複雑。全体を跨いで情報連携・統合・分析を行うようなソリューションも重視されている。
  • なお、AI、ローコードおよびノーコードツールはすでに各社サービスに組み込まれている。

NisshoUSA注目ポイント

今回のカンファレンスでは保険業界の課題に対するさまざまなソリューションが発表され、各社競うように優位性を説明していましたが、なかでも目立ったのはツール連携やビジネスプロセス全体の改善という言葉です。それも何か1つの作業をピンポイントで改善するのではなく、ビジネスプロセス全体の課題解決を目指すものが多く、顧客体験全体を改善する取り組み、つまりエコシステムの実現に向かっていく印象を受けました。

ほかにも保険基幹業務には関わらない部分では、ウェルスマネジメントに関わる顧客資産管理ツール、健康管理ゲーミフィケーションツール、ペット情報提供・コミュニティー運営と保険をかけあわせたサービスプラットフォームなどのデモがあり、いずれも興味を引かれました。

 

最後までお読みいただきありがとうございました。
Nissho Electronicsは最新テクノロジートレンドも視野に入れ、お客様の気づかない課題を一緒に見つけると共に、技術の裏付けを持ったご提案から構築・保守・運用と一貫したソリューションの提供いたします。

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この記事を書いた人

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Manabu Nitta

1998年、日商エレクトロニクス入社後、 ネットワーク分野に関わる営業、マーケ、商品企画開発を経て2013年4月より3年間サンノゼ赴任。 2016年日本帰国後、日本法人設立前のNewRelicやZoomなどSaaSビジネス立ち上げに加え、自社ビジネスモデルの変革にも挑戦、マルチクラウド環境の設計運用簡素化に繋がるサービスビジネスの立ち上げを行う。 2022年4月より2度目のサンノゼ駐在となり、先進技術のみならず、オープンイノベーションをベースとした新たなる当社価値の提供、お客様との事業共創に向け活動中。

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