米国イノベーティブカンパニー 2019.10.15

【TechCrunch Disrupt SF 2019】レイ・ダリオ氏が語る「アイディアの能力主義」とは?

Tech Crunch

こんにちは、Nissho Electronics USA 能任です。

本日は「TechCrunch Disrupt SF 2019」第二弾のブログです。

第一弾ではスタートアップバトルフィールドを制した「Render」とは?でマネージドクラウドサービスのスタートアップ「Render」を取り上げましたが、本カンファレンスに登壇したのはスタートアップベンダーだけではありません。NBA選手として最高年俸を稼ぐゴールデンステート・ウォリアーズ所属のステファン・カリー氏、IPO目前のフードデリバリーPostmates CEO Bastian Lehmann氏など、世界中から注目を集める著名人の参加で会場は終日賑わっていました。そんな数あるセッションのなかで今回ご紹介したいのは、ヘッジファンドマネージャーのレイ・ダリオ氏の講演です。

Stefan Curry

ステファン・カリー氏が講演している様子(右から2番目)

世界最大級のヘッジファンドを率いるレイ・ダリオ氏

レイ・ダリオ氏は約14兆円もの資産を運用する世界最大のヘッジファンド、ブリッジ・ウォーター・アソシエイツの創業者です。丸暗記が苦手で人に指図されることを嫌うダリオ氏が12歳の時に夢中になったものが株取引でした。ダリオ氏が最初に購入したノースイースト航空の株価は運よく3倍となり、その取引がきっかけで株取引の世界にのめり込みました。

その後ハーバード大学でMBA取得、ニューヨーク取引証券所で数年活動した後、1975年にレイ・ダリオ氏が設立したブリッジ・ウォーター社は現在世界最大のヘッジファンドとなり、現在では約15兆円もの資金を運用しています。

彼はどのようにして一代でヘッジファウンドを築き上げたのでしょうか?経済の仕組みや知識はもちろん大切ですが、その鍵は「アイディアの能力主義」にあるようです。今回の登壇では、実際にブリッジ・ウォーター社が現在も実践している社内の仕組みについて、その秘密を明かしました。

Ray Dalio

レイ・ダリオ氏が登壇している様子(右から2番目)

成功の鍵はアイディアの能力主義

「意思決定」は企業への投資や買収など様々な場面で日々行われています。意思決定を行う人・組織はあらゆる情報をもとに、最善の解を求めて何かしらの決断をしています。

1975年にファンド創業後、レイ・ダリオ氏は「自分は正しい」という考えをもとに意思決定を行っていました。しかし数年後に経験した大きな失敗をきっかけに考えを改めたといいます。その後レイ・ダリオ氏が目指したのは、自分の独裁ではなく、社員の意見が等しく評価される民主主義でもなく、「アイディアの能力主義」でした。

アイディアの能力主義とは「最善のアイディアが勝ち残るという思想」です。この考えに基づいた仕組みをブリッジ・ウォーター社は実際に採用しています。この実現のためにレイ・ダリオ氏が強調するキーワードが「完全な率直さ(radical truthfulness)」と「徹底的な透明性(radical transparency)」です。例えば役員クラスから一般社員まで出席している会議がある場合、同社では役職や過去の実績にとらわれず、全員の意見やアイディアを完全に可視化できる状態にしています。それによってチームメンバーの意見を尊重できるようにし、結果的に最善のアイディアが勝ち残る仕組みを取り入れて運用しているのです。

DotCollector1

会議の様子。役員から一般社員まで会議に参加し、参加者全員の意見を完全に可視化する仕組みが取り入れられている。

アイディアの能力主義を実現するツール「ドットコレクター」

この実現を支えたのが、ブリッジ・ウォーター社独自のツール、「ドットコレクター」です。このツールは「完全な率直さ」と「徹底的な透明性」を実現し、ブリッジ・ウォーター社に風通しのよい文化と強い組織をもたらしました。

風通しのよい文化を構築

ドット・コレクターには、出席した会議でお互いに評価を行い、コメントができるという機能があります。機能の1つとして例えばレイ・ダリオ氏と入社後間もない20代の若手社員が同じ会議に出席をした際、その若手社員がレイ・ダリオ氏に10点中3点という低評価をつけてコメントをしたことがあったそうです。レイ・ダリオ氏にとって若い社員からの率直なフィードバックを受けること、そして若手の社員にとって経営層に直接意見を伝え、評価ができるということは双方にとってメリットがあり、結果として風通しのよい文化を築き上げているのです。

データに基づいて最適な組織を提案

上記で紹介した双方への評価ならびにコメントのデータをドットコレクターは収集し、活用します。例えば組織編成の際、従来は経営層の考えだけでチームが作られていましたが、ドットコレクターは収集したデータをもとに最適なチーム編成を提案します。意見が強い経営層の独断や偏見ではなく、風通しの良い文化で収集されたデータを分析した結果から導き出されるチーム編成案は、最終的に意思決定をする際の1つの貴重な材料となります。

DotCollector2

ドットコレクターのUI。各社員がお互いに評価をしている画面。

まとめ

「完全な率直さ」と「徹底的な透明性」、この2つのキーワードは変化のスピードが速いこの時代では益々重要になってくるでしょう。会社の命運を左右する戦略・方針の意思決定をする際に経営層の考えだけでいいのか、感度が高い若手社員の意見は本当に取り入れられているのか、今回のレイ・ダリオの講演で自分自身の意思決定について考えを改めさせられるきっかとなりました。

成長を続けている企業には必ず何かしらの秘訣があります。米国の企業で成功している企業の秘訣についてNissho electronics USAではその秘密を今後も追って皆様にお届けしたいと考えております。

次回はTechCrunch Disrupt SF 2019 バトルフィールドでファイナルに残ったスタートアップについて取り上げたいと思います。

Nissho Electronics USAでは、お客様のビジネスを共創&サポートすることを目指し最新のテクノロジートレンド、ユーザートレンドを日々調査しております。是非お気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

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Shuichi Noto

2008年にユニアデックス入社。5年間の大手通信キャリア向けの営業を経験した後、日商エレクトロニクスへ入社。大手OTTの情報システム部門向けにVDIやWeb会議などの働き方改革を促進するソリューションの販売に従事。2019年よりNissho USAに赴任。お客様のビジネスを共創&サポートできるようなソリューションの発掘を目指し日々活動中。担当領域はITインフラ全般、ヘルスケア業界、地域創生など。趣味はゴルフとサッカー。

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