シリコンバレーテクノロジー 2018.12.19

AWS re:Invent 2018:クラウドマネジメント注目の理由

こんにちは、Nissho Electronics USAの小松です。

2018年先月11月末に米国ラスベガスでアマゾンウェブサービス(以下AWS)主催の年次カンファレンス「AWS re:Invent 2018」が開催されました。そこで今回はイベントレポートとともに、イベントでもますますの盛り上がりを見せていたクラウドオーケストレーションやマネジメントテクノロジーのトレンドをご紹介したいと思います。

なお、ここでいうクラウドオーケストレーションやマネジメントテクノロジーとは、クラウド上のインフラリソースの割当や制御等を自動で実行するクラウド管理のテクノロジーとして定義したいと思います。これによりクラウドを運用する管理者の負担を軽減するとともに、スピーディなサービス開発やリリースの助けとなると言われています。

クラウドオーケストレーションやマネジメントテクノロジーは数年前よりクラウド関連のイベントでは話題でしたが、ここ最近また注目度が増しているような印象を受けます。

その注目の理由について、「AWS re:Invent 2018」を振り返りながら触れていきたいと思います。

クラウドオーケストレーションとマネジメントテクノロジー再注目のわけ

理由1.脅威の成長率を誇るAWSの普及

1つ目の理由はパブリッククラウドの普及です。

数ある事業者の中でAWSによるパブリッククラウドマーケットシェアは群を抜いています。「AWS re:Invent 2018」で発表された2017年度の実績ベースでは、AWSが51.8%を占めています。続くMicrosoftが13.3%、以降Alibaba CloudやGoogleとなっており、AWSのシェアは圧倒的です。

また、ビジネス成長率も昨年比46%アップと脅威の成長を遂げています。昨年も既に40%を超える成長率であったにも関わらず、今年は更にそのうえをいく成長があったことにも驚きです。

このことからも、企業がクラウドを利用することに躊躇いがなくなり、採用が更に進んでいることは明らかです。企業のクラウド活用、クラウドに対する依存度が増えるにつれて、クラウドオーケストレーションという役割がより際立ってきたと言えます。

理由2.スピーディなサービス開発やリリースに求められるサーバレスの浸透

2つ目の理由はサーバーレスやFaaS、Application as a Serviceと呼ばれるテクノロジーやサービスがより注目されるようになったことです。

これらはクラウド利用者がサーバや仮想マシン等のインフラリソースを意識することなく、サービス開発やリリースに集中し、スピーディにそれらを実現するために必要な手法です。そしてこの手法について考え方を議論するうえで必ず登場するのがAWSのLambdaサービスです。

LambdaはAWSにおいてサーバレスを実現するための中核となるサービスで、注目が高まっています。実際に昨年の「AWS re:Invent 2017」より露出度が高まった印象を持ちました。

Lambdaを介したサーバレスによるサービス開発のおかげでAWS利用企業は勿論、AWS自身のサービスリリースにも追い風になっていたと思います。

(「AWS re:Invent 2018」でもっともよく議論されたAWSサービスについてアンケートした結果、AWS Lambdaサービスがトップとなっていた。)

つまりサーバレスという考え方が普及すればするほど、クラウド利用者の意識はインフラ管理ではなくサービス開発とリリースに集中します。これにより、他社とのサービス開発やリリースのスピード競争に打ち勝てるのです。

そこで必要になるのがクラウドオーケストレーションです。クラウドオーケストレーションはインフラ管理の大部分を担うことができるので、利用者が本来注力すべき役割に集中できることになるのです。

理由3.サービスやアプリケーションのポータビリティ

3つ目の理由としてあげたいのは、クラウド上で動作するサービスやアプリケーションのポータビリティがより重要になっていることです。

昨今の開発手法において従来のモノリシックなシステム開発では無く、マイクロサービスという開発手法があるように、システムを構成する各機能が小分けになったシステムが注目されています。勿論、環境により前者、後者のいずれが相応しいのかはまちまちですが、機能が小分けになるということは、持ち運びに優れるということです。

AWSの勢いは明らかですが、上述したMicrosoftやGoogleを活用している企業も多いことでしょう。中には、AWSに加えてMicrosoftを使うといったハイブリッドやマルチクラウドの形態で利用する企業もあります。バックアップや災害対策、機能拡張などを考えると、将来的にも容易に想像がつく利用形態です。

そうなると、サービスやアプリケーションを自由にクラウド間で行き来させ、異なるクラウド上でも同一機能を動作させる、もしくは異なるクラウド上のサービスに追加する等、持ち運びが出来るという考え方が求められるようになります。

そしてここでも必要になるのがクラウドオーケストレーションです。ここでのクラウドオーケストレーションの役割は、サービスやアプリケーションのクラウド間移動によって余剰するリソースや逆に不足するリソースを柔軟に補填することです。このような役割はサービスやアプリケーションのポータビリティが上がれば上がるほど、重要になるはずです。

関連記事:驚くべきAmazonの破壊力 – AWS Re:invent 2016 –

クラウドオーケストレーションのトレンド

クラウドオーケストレーションツール自体のトレンドに少し触れたいと思います。

オペレーション簡素化とコスト最適化が求められるクラウドオーケストレーション

「AWS re:Invent 2018」期間中のセッションに加え、協賛企業でにぎわう展示会場でもクラウドオーケストレーションは注目分野の1つでした。今までも従来オーケストレーションや自動化というキーワードは良く取り扱われていましたが、ここ最近は少し新しい傾向が見られます。

クラウドオーケストレーションツールのダッシュボードで、現在利用中のクラウド環境料金(仮想インスタンス料金等)表示が可能になったり、クラウド側の料金変動にあわせてコストシミュレーションし、他に安価な環境があればその環境を推奨し、自動で移行することまで可能になっているのです。

オペレーション簡素化や自動化を手助けする従来のものに加えて、コストを最適化した環境をスムーズに使えるということは誰からみてもありがたいものです。さらにそれがAWSのみならず、他の異なるクラウドとも連携が出来るとなると、素晴らしい柔軟性がサービスに加わることになります。

AWS然り、クラウドは使い方によっては安くもなり、高くもなるサービスです。利用者がコストに頭を悩ますことなくサービス継続や新たなサービスをつくりあげていくためには、やはりこのようなインテリジェンスをもったオーケストレーションツールが不可欠になります。

まとめ:より付加価値の高いデジタルトランスフォーメーションを実施するために

今回「AWS re:Invent 2018」に参加して感じたことは、AWSの勢いがすさまじい分、余程の玄人でない限りAWSを120%うまく活用するにはまだまだ時間がかかるということでした。つまり利用者がそのギャップを埋めるため、自分たちの要望を反映させるためには後方支援が必要になるということです。

そして我々インテグレータが今まで以上に、お役に立てる機会があると思っております。日商エレクトロニクスは、お客様のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けたDX専門チームを立ち上げています。

アプリケーションパフォーマンス監視の「New Relic」をはじめ、AIによるログ分析を実現する「Loom Systems」等、複数の最先端ポートフォリオと技術力でお客様を支えています。是非問い合わせページよりご連絡ください。

また、Nissho Electronics USAでは米国より最新トレンドを日本へ発信しております。こちらもご興味、お問合せ等ございましたら何なりとご連絡ください。

この記事を書いた人

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Nobuyuki Komatsu

2004年、日商エレクトロニクス入社。JuniperやBrocade、Viptelaなどネットワークを軸としたインフラ製品の事業推進や新規ベンダー立ち上げに関与。2017年10月よりサンノゼ赴任。シリコンバレーで得られる最新の情報を発信しつつ、新たなビジネスモデル開発に向け日々奮闘中。2020年現在の担当領域は、クラウドやフィンテック、インシュアテックなど。バスケットボールとキャンプが趣味。

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