イノベーティブ・スタートアップ 2018.05.21
TEXT:Team Nelco

【Fintech(フィンテック)】キャッシュレス化を後押しするアメリカで話題のP2P送金サービス、Zelleとは?

世界ではキャッシュレス化の波が広がっています。日本のお隣韓国では、非現金決済時の消費税減税制度を取り入れたことなども後押しキャッシュレス決済の割合が9割を超えました。また、イギリス、オーストラリア、シンガポール、カナダ、スウェーデンなども政府による非現金化に向けた取り組みにより、キャッシュレス決済が全体の7割から5割を超えています(*1)。

アメリカでは、政府主導の取り組みがなされているわけではないものの、46%がキャッシュレス決済というデータがあり、普段は現金を持ち歩かないという人も少なくありません(*1)。

キャッシュレス化が進んだ社会では、クレジットカードやデビットカードはもちろんのこと、最新Fintech(フィンテック)による様々な支払い方法がそれぞれの地域で登場しています。今回は、そんなキャッシュレス化のスピードを後押しする、アメリカで話題のFintechサービスのZelleを紹介します。

話題のFintechサービス「Zelle」 とは?

Zelleは2017年6月にスタートしたばかりのP2P口座間直接送金サービスで、サービス開始当初から30以上のアメリカ国内金融機関とパートナーを結んだことで話題を呼んでいました。Zelleは単独のモバイルアプリではなく、各銀行が運営する口座管理アプリやWebサービスの機能として導入されています。累計取引金額の成長も著しく、2018年の第一四半期では250億ドルの取引きがあり、前期の2017年の第四四半期から15%の伸び幅になっています(*2)。アメリカで大手銀行の1つである、バンク・オブ・アメリカではすでに300万人がZelleを利用しており、1日に平均1000人ずつユーザーが増え続けていると報告されています(*3)。

個人利用者にとってのZelleのメリット

ユーザーにとってのZelleの魅力は何と言っても、時間や手間をかけることなく、様々な場面で支払いができる送金方法を提供している点です。もちろん、ATMや銀行に行くことなく、モバイルやパソコンから数分で口座間送金を完了することが出来ます。

Zelleは友人間での食事の割り勘や買い物の建て替えをお願いしたときなどにも活躍します。例えば、友人5人でレストランでディナーに行った場合のお会計は、幹事が代表してカード払いをし、他の4人がZelleに支払う金額を入力して幹事宛てに「Pay」ボタンをタップすれば完了です。

このようなタイプの他サービスの1つに、Zelleが登場する以前の2009年からサービスが開始されているVenmoというアプリがあり、友人間でのカジュアルな支払いで多く使われています。現金で集めるより、計算ミスもなく時間もかからないため、大人数でもスマートに会計が終えられることがとても受けています。「割り勘はモバイルで」という考え方はもう当然のことのように、アメリカでは普及しているのです。

またZelleがアメリカで注目される理由は、口座番号を支払う側に知らせずとも送金を受けられるという点にもあります。Zelleでは、送金相手の名前とメールアドレス、電話番号を知っていればオンライン上で送金が可能なのです。アメリカではクレジットカード払いが主流であることを考えると意外かもしれませんが、口座番号を他人に共有することには強く敬遠する傾向にあります。Zelleはそういった人々のニーズを満たしていると言えます。

このようなP2P送金サービスは、FacebookのメッセンジャーやGmail、SnapChatなどのコミュニケーションツール上でも北米や一部の国に限って展開されており、メッセージを送り合いながら送金することができます。アメリカでは、ユーザー同士でいかにシームレスにお金をやり取りできるかというところが注目されているようです。

拡大し続けるZelleのパートナーシップ

Zelleのような仕組みを導入することは、パートナーシップを結ぶ金融機関側も、システムを独自に構築する必要がないため、最小限の投資で利用者に対するより心地よいサービスを提供できるというメリットがあります。

また銀行がバックについたP2P送金サービスということで、セキュリティ面も安心するユーザーが多いというのも事実です。そういった背景からも、現在は銀行のみならず、VISAやMasterCardもネットワークに参加しており、IBMをはじめとするテクノロジー関連企業もパートナーとして参加しています。彼らは、セキュリティ面での強化や、使いやすさの向上、新たなサービスへのインテグレーションのための開発作業などをサポートしています。IBMであれば、自社の金融取引マネジメントソフトウェアやAIのワトソンをZelleの支払いネットワークに組み込むプロジェクトを行うなど、機能面のアップデートを積極的に進めているようです。

これからZelleがP2P口座間送金サービスの枠から、より広い分野での支払いにおけるネットワークとしての役目を担っていくことが期待できます。

キャッシュレス系 Fintechがより一層注目される理由

記事冒頭でも触れましたが、アメリカでは行政による推進政策ではなく、民間企業による非現金支払いサービスの普及が社会のキャッシュレス化を後押ししています。Zelleはまさにその一例であり、アメリカにおける非現金支払いサービスのトレンドを表しています。

このような海外におけるキャッシュレス化のトレンドを押さえておくことは、自社サービスを国外で展開する際にもとても参考になります。現地で人気のある支払い方法に対応しないサービスは、結果として現地ユーザーに受け入れられづらく、企業がそのような知識をつけることはマストでしょう。また、他の地域に住む人々が支払いという場面にどのようなことを期待しているのか頭に入れておくことは、地域に求められるサービスを提供する上でとても重要です。

今後も安全かつユーザーにとって使いやすいペイメントソリューションは増えていくと思われます。本ブログでは引き続き海外の新しいサービスに注目しながら、最新動向を押さえていきたいと思います。

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参考記事:
(*1)経済産業省データ:キャッシュレス化推進に向けた国内外の現状認識
(*2)Zelle Press Release (April 26th, 2018)
(*3)Bank of America reports 84% increase in Zelle P-to-P payments

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