DXを支援する注目スタートアップ 2019.12.19

【Money20/20 2019 レポート】米著名ベンチャーキャピタルが投資し損ねたユニコーン「Hippo Insurance」の魅力とは

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世界最大級の決済・金融イベント「Money20/20 2019」では、フィンテックの未来について、Andreessen Horowitz(a16z)、FT Partners、Techstarsのベンチャーキャピタル3社によるパネルディスカッションが行われました。

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このなかでも私が注目していたのがa16z。同社は米シリコンバレーの超有名VCの1社で、Facebook、Slack、Instagram、Skype、Lyftなど名だたる企業の上場、買収に携わり、企業家からも抜群の人気を誇っています。創業メンバーの1人であるベン・ホロウィッツの著書『ハード・シングス』は個人的にお勧めの1冊です。

ディスカッションでは、「レギュレーションが大事」「ダイバーシティが大事」「フィンテック熱は今後ゆっくり冷めていく」など、様々なポイントが挙げられていましたが、モデレーターからの最後の質問が「これまで投資しておけば良かった、投資し損ねたと思うフィンテック企業は?」というもの。これは私自身、著名VCに質問できるなら必ず聞いてみたい質問の1つです。それに対して、a16zが真っ先に挙げたのが「Hippo Insurance(Hippo)」。その様子にはよほど後悔しているような印象すら受けました。

Hippoは、フィンテックの中でも、保険分野で注目を浴びている1社です。今回はLemonadeと並んで最注目のスタートアップHippoの魅力を掘り下げてご紹介したいと思います。

Hippoとは?

2015年に米サンフランシスコに設立されたHippoは、オンラインで住宅・家財保険を提供するフィンテック(インシュアテック)スタートアップです。米国では住宅所有者の約6割が保険に加入していないという事実にビジネスチャンスを見出しました。

2017年より正式に保険販売を開始し、現在では米国内20の州でサービスを提供しています。サービスを提供するのは米人口の60%を占めるエリアで、2020年のエリア拡大では90%になると宣言しています。企業価値は既に$1B(1000億円)を超え、業界のビジネスモデルに変革を起こすユニコーン企業として注目を集めています。

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Hippo社ホームページより引用。建物の住所情報を入力することから見積算出がスタートする。

魅力1:高速見積り60秒は業界一、申込までわずか数分

Hippoでは、公共機関の建物記録や衛星画像による同社独自の分析により、対象物件の状態を正確に把握することが可能です。そのため、ユーザはオンラインで最低限の質問に答えるだけで、自宅の保険見積を正確、かつスピーディに入手できるのです。

実際にやってみると、次の4つの質問に答えるだけで金額が算出されます。

  1. 住所
  2. 建物は一軒家かコンドミニアム(日本で言うマンション)
  3. 誰が住んでいるか、誰と住んでいるか
  4. 建物の建立年

追加で、自動車保険加入有無や、共用エントランスに鍵があるか否か(コンドの場合)などを選択するとディスカウントも簡単に算出されます。顧客体験としてこの手軽さは魅力の1つです。また、これまでの保険から乗り換える場合は、アドバイザーが丁寧に乗り換え書類の記入方法などをレクチャーしてくれます。

魅力2:スマートホーム x 保険の組み合わせサービス

Hippoは、Notion(IoTツールやサービスを提供する企業)とパートナーシップを結んでおり、ユーザへIoTスターターキット(センサーやブリッジなど)を無償配布しています。バスタブやキッチンなどの水回り、また玄関ドアや窓などにそのセンサーを取り付け、家財の状態をデジタルに把握することで、いち早く問題を検知し、将来トラブルになりそうなことを予防するのです。このような予防措置はユーザにとっても、保険会社にとっても大きなメリットがあります。

さらに同社は、ユーザがNotionを介して予防措置可能なスマート家電を保有している場合にスマートホーム割引として追加値引きを提供しているほか、ときにはギフトやプロモーションを提供しているようです。また、スマートホームは、宅内にインターネットサービスを提供する通信事業者とも相性が良いため、Hippoは米Comcastとスマートホームソリューションに関するパートナー提携し、自社サービスの販売チャネルとしてComcastチャネルも利用しています。

魅力3:住宅・家財のプロからなるワンチーム

パートナー企業の充実も魅力の1つです。Hippoは、Comcast以外にも、様々なパートナーシップによりユーザをサポートしています。住宅建設を手掛けるLennar、住宅ローンを提供するBetter.comなど、住宅に関わるプロフェッショナルとの連携で保険をとりまく広範囲な住宅流通、サポートネットワークを構築しています。

また、Hippoは設立間もないスタートアップでありながらSheltrというホームメンテナンスを専業とする会社をパートナーとして買収したことも驚きです。これにより、スマートホームによる予防措置に加え、ユーザは専門家による定期メンテナンスを受けることができます。デジタルによるアラートだけでは分からない細かな部分の欠陥を、Sheltrのサービスで補完してもらえるのです。

これまでの保険では、ユーザーは受け身のイメージが強く、何かが起こってからあたふたして保険の手続きをする…というのが一般的でしたが、Hippoではその「何か」を予防あるいは早期発見することで、ユーザーが自ら積極的にに保険と関われるようにしたのです。

魅力4:会社倒産時のリスク回避もばっちり

Hippoを調べていておもしろかったのは、ウェブサイトの「よくある質問」ページのなかに「会社が倒産したらどうなりますか?」というQ&Aが用意されていたことです。スタートアップという特性上、会社の存続性はユーザが気にするポイントの1つです。その点、Hippoは、「Munich Re」や「Topa」という大手保険会社をバックに再保険の仕組みを取り入れることで、リスクを回避しています。

再保険とは、1社でユーザへの保険料が負担できない場合に、再保険会社のサポートを借りて支払う仕組みです。災害時など一度に多数のユーザサポートをしなければならない時に利用されることが多く、一般的に生命保険分野より、損害保険分野で定着しています。Hippoに何かあっても大手がサポートしてくれるから大丈夫と言い切ってくれるのもユーザにとっては魅力の1つでしょう。

まとめ:ユーザ第一主義を追求している

Hippoをより深く調べていて感じたことは、何よりもユーザのことを一番に考えているということです。

ミレニアルやZ世代を意識した、モバイルでの容易なユーザ体験や、IoTテクノロジーを活用した新たなサービスモデルはもちろんですが、ユーザにとって本当に必要なのは「何も起こらないこと」、つまり予防であり、早期発見です。同社がこの部分に焦点を当て、保険との関わり方をこれまでよりも「積極的」な考え方へと変化させたことは業界にとっても大きな気づきになっているのではないでしょうか。

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顧客満足度が高いこともHippoの魅力

実際Hippoはユーザーに高く評価されています。顧客満足度指標であるネットプロモータースコア(NPS)において、Hippoは76ポイントを獲得しているのですが、これは業界平均の3倍になるそうです。選ばれるサービスとは結局ユーザー第一主義なのだということが改めてわかります。Hippoについて調べれば調べるほどa16zが後悔している理由が分かった気がしました。

最後までお読み頂きありがとうございました。Nissho Electronicsは最新テクノロジートレンドも視野に入れた、デバイスにとどまらない提案と構築・保守・運用の一貫したソリューションをご提供しています。サービスの詳細はこちらからご覧いただけます。また、弊社へのお問い合わせはこちらのフォームよりお気軽にご連絡ください。

この記事を書いた人

Nobuyuki Komatsu

この記事を書いた人

Nobuyuki Komatsu

2004年、日商エレクトロニクス入社。JuniperやBrocade、Viptelaなどネットワークを軸としたインフラ製品の事業推進や新規ベンダー立ち上げに関与。2017年10月よりサンノゼ赴任。シリコンバレーで得られる最新の情報を発信しつつ、新たなビジネスモデル開発に向け日々奮闘中。2020年現在の担当領域は、クラウドやフィンテック、インシュアテックなど。バスケットボールとキャンプが趣味。

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