イノベーティブ・スタートアップ 2021.12.19

【12月版:Webinar記録】米国の注目スタートアップを紹介! 25分でシリコンバレー・トレンドをサクッとキャッチアップ!

2021年11月、「スタートアップの祭典」と呼ばれるイベント・Web Summit2021が開催されました。また同月、XRテクノロジーをテーマとするカンファレンス・AWE2021も開催されています。本ウェビナーでは、米国駐在員である日商エレクトロニクスUSA・能任(のと)が、今年のWeb Summitに出場した注目のスタートアップを8社、AWE2021でアワードを獲得したスタートアップを5社、ご紹介しました。

TOPIC1 スタートアップ祭典Web Summit2021 注目スタートアップ紹介

Web Summit(ウェブサミット)は、毎年ポルトガルの首都リスボンで開催されている、世界最大級のスタートアップの祭典です。多くのカンファレンスは著名人による基調講演から始まりますが、Web Summitでは主役であるスタートアップのピッチから、その1日がスタートします。2022年の9月には、Web Summitが東京で開催される予定です。なお、同系列のカンファレンスとしては、毎年5月にトロントで開催されるCollision(コリジョン)、毎年3月に香港で開催されるRISE(ライズ)などがあります。

今回は、そんなWeb Summitでアワードを獲得したスタートアップ、ならびに日本でも受け入れられそうな計8社を、ピックアップして解説しました。

1社目:Smartex.ai(スマーテックスエーアイ)

2021年のスタートアップピッチのウィナーに輝いたSmartex.aiは、繊維産業の大きな問題である、繊維廃棄物の削減を目指すスタートアップです。AIとコンピュータービジョンを搭載したカメラとセンサーで、製造工程をモニタリングするソリューションを提供。このソリューションを繊維生産機械に取り付けることで、製造プロセス中に精度の高い検査を自動で行うことができ、廃棄物の量を削減できます。

2社目:Okra Solar(オクラソーラー)

スタートアップピッチのファイナリストに選ばれたOkra Solarは、電気設備が整っていない地域に電気を届けるための、ラストワンマイル電化ソリューションを提供しています。現在でも約8億人もの人々が電気を利用できずにいますが、Okra Solarはエネルギー会社にそのソリューションを安価で提供することで、各地域に電気を供給する仕組みを作っています。エネルギー会社が各家庭にOkra Solarのプラグとプレイキットを提供し、各機器から収集したデータを収集クラウドへ送り、運用することで安価に電気を供給できます。

3社目:LiSA(リサ)

同じくスタートアップピッチのファイナリストに選ばれたLiSAは、EC事業者などにライブコマースのプラットフォームを提供するスタートアップです。LiSAのプラットフォームは、既存のECサイトやアプリに簡単に埋め込むことができ、ライブコマース機能を自社サイトに追加したいEC事業者をサポートします。中国や米国などでライブコマース市場が拡大していく中、本機能を追加したすることで売上を増加させたEC事業者も出てきています。

ここからは、スタートアップピッチでアワードを逃したものの、日本でも受け入れられそう注目のスタートアップを紹介します。

4社目:Nylas(ナイラス)

Nylasは、Eメールやカレンダーなどのコミュニケーションツールと簡単に連携するAPIを提供しています。例えば、開発中のサービスをOutlookのカレンダー情報と連携させたい場合、NylasのAPIを利用すれば複雑なコーディングなしで連携できます。この数年で、決済機能をAPIで提供するStripe(ストライプ)や、銀行口座との接続をAPIで提供するPlaid(プレイド)など、APIを活用して機能実装を提供するスタートアップの成長が加速しており、NylasはEメールなどコミュニケーションツールとの連携にフォーカスしています。

5社目:Bubble(バブル)

Bubbleは、ノーコードプラットフォームを提供するスタートアップです。ユーザーは、Pythonなど従来のプログラミングコードを書かずとも、PowerPointと似たような操作でアプリケーションを作成できます。Bubbleの特徴は多種多様なテンプレートを用意している点で、テンプレートを利用すればすぐにアプリケーションの作成が可能です。2021年7月にはシリーズAをリードしたInsight Partners(インサイト・パートナーズ)から、約110億円を調達して注目を集めました。

6社目:FlutterFlow(フルッターフロー)

Flutter Flowは、モバイルアプリに特化したノーコードツールを提供するスタートアップです。ノーコードで作られたアプリの裏で動いている点が特徴的で、iOSとAndroidの両方をカバーできるため、それぞれ別にサービスを構築する必要がなく、モバイルアプリの開発を効率良く行えます。裏で書かれるコードを公開していないノーコードツールが多いなか、FlutterFlowはコードを公開しているため、Github(ギットハブ)との連携も可能です。

7社目:Fast(ファスト)

FastはECサイトの決済機能と個人認証サービスを提供するスタートアップで、決済体験を改善することでECサイトの売上増加を目指しています。最初にクレジットカードなどの決済情報を登録すれば、以後は2クリックで決済が可能となります。この決済領域は非常にホットな領域で、2021年1月に決済機能をAPIで提供するStripeがシリーズBラウンドで約110億円を調達したほか、Fastの競合になるBolt(ボルト)は、2021年10月にシリーズDラウンドで約430億円を調達しています。

8社目:NachoNacho(ナチョナチョ)

NachoNachoは米国アクセラレーター・Alchemist(アルケミスト)出身者によるスタートアップで、B2Bに特化したマーケットプレイスを提供。取り扱うのは、クラウドサービスのAWSやデザインソフトウェアのCanvaなど、企業が利用するさまざまなツールです。マーケットプレイスでの販売はもちろん、更新などの管理も可能な点が特徴です。販売から管理までを1プラットフォームで提供することで、利用企業の管理負担を減らします。出品側もマーケットプレイスで販売することで、ユーザーとの新たなタッチポイントを得られます。

なお、私能任がNachoNachoのCEOに初めて出会ったのは、Lunch Club(ランチクラブ)というビジネス特化のマッチングサービスです。日本にいる方でも使えるおすすめのサービスですので、Lunch Clubについても簡単にご紹介します。

Lunch Clubは、独自のアルゴリズムでユーザー同士をマッチングさせて、1対1のミーティングをセットアップします。ニーズが合う参加者同士をマッチングさせる精度の高さを強みとしており、オンラインでも新たな人脈を作るきっかけを与えてくれるプラットフォームです。以前は対面のミーティングもありましたが、現在は新型コロナウイルスの感染リスクをふまえ、オンラインのみのマッチングとなっています。

私自身は、Lunch ClubをスタートアップやVCの方々との新たな人脈作りに活用しています。今までに65回のミーティングを実施しましたが、その中で日本人の方とも1名マッチングしましたので、日本人で活用している方も少しずつ増えてきていると思います。

TOPIC2 XRテクノロジーカンファレンスAWE2021 注目スタートアップ紹介

XRテクノロジーカンファレンス「AWE2021」は、2021年11月にカリフォルニア州サンタクララのリアル会場にて開催された、XR(クロス・リアリティー)をテーマとしたカンファレンスです。AWEは「Augmented World Expo」の略で、2010年から開催されています。ちょうどFacebook社が社名を「メタ」に変更した直後に開催されたということもあり、非常に盛り上がりを見せたイベントとなりました。今回は、本カンファレンスでアワードを獲得したスタートアップや、メタバース関連の注目スタートアップを5社解説しました。

1社目:Tvori(トボリ)

Tvoriは、Best of Collaboration Tool分野でアワードに輝きました。同社は、チームメンバーと一緒にさまざまなデザインやプロトタイプを作れる仮想空間を、VR(Virtual Reality)上で提供します。新規プロダクト開発でプロトタイプを作成したい時など、事前に仮想空間上で作成してみることで、各関係者のイメージを合わせられます。現在対応しているデバイスはOculus Quest(オキュラスクエスト)のみですが、Tvoriの仮想空間上で作成したものはPNG形式やJPG形式などでエクスポート可能で、さまざまなユーザーに共有できます。

2社目:Spatial(スパチャル)

Spatialが提供するのは、XRを活用したバーチャルオフィスです。参加者の3Dアバターを作成して、アバター同士、あるいは人とアバター間のコミュニケーションができるバーチャルオフィスを提供します。コロナ禍の影響で、バーチャルオフィスにVR・AR(Augmented Reality)技術を活用した例の1つです。特徴的なのは、クロスデバイス(異なるデバイス間)に対応している点です。MetaのOculus QuestやMicrosoftのHololens(ホロレンズ)など、人によってデバイスが異なるケースにも対応でき、VRやARのデバイスを持っていない人でも、PCからSpatialが提供するバーチャルオフィスに参加できます。

3社目:Within(ウィズイン)

Withinが提供するのはさまざまなVRのコンテンツですが、代表的なのはフィットネスゲーム「Supernatural(スーパーナチュラル)」です。対応デバイスはOculus Questで、数十分のエクササイズをゲーム感覚でできるように設計されています。コントローラーを持ちリズムに合わせて飛んでくるターゲットをたたき落としたり、しゃがんでかわしたりするなど、全身を使うプログラムが用意されています。コロナ禍で在宅でのフィットネスが浸透し始めているうえ、MetaがWithinを買収したため、今後より注目されていくでしょう。

4社目:3DLook(スリーディールック)

3DLookは、ユーザーのアバターを作成し、そのアバターでバーチャル試着を行うことで、服のサイズやフィット感を確認できるアプリを提供します。3Dルックが開発したモバイル3Dスキャニング技術を用いているため、アバターの作成は簡単。スマホのカメラから、ユーザーの正面からと横からの写真を撮るだけです。オンライン市場が成長していく中、3DLookによるバーチャル試着を利用することで、返品率の低下が期待されています。

5社目:echo3D(エコースリーディー)

echo3Dは、3Dゲームやアプリを高速で作れることを目指して、3D・AR・VRコンテンツの保存と、配信機能を持つプラットフォームを提供しています。本プラットフォームを活用すれば、管理しているコンテンツを、スマートフォンやブラウザなどさまざまなプラットフォームに素早く配信できます。ゲームエンジンUnityの認定ソリューションパートナーに登録されているほか、2021年10月にGitHubやMetaから出資を受けており、メタバース関連や開発関連の企業から注目を集めていることがうかがえます。

最後に、Nissho USAが注目しているトレンド「次世代カスタマーサクセス」について解説します。

カスタマーサクセスという言葉やポジションがベイエリアで出始めたのは、2012~2013年頃です。日本でもこの言葉はよく聞くようになってきたかと思います。実際、弊社でもZoomやAsana(アサナ)などのSaaS製品のカスタマーサクセスとして、すでに活動している社員もいます。カスタマーサクセスをテーマに取り上げた理由は、カスタマーサクセスの重要性向上に伴い、それらを支える新たなスタートアップが出てきていることです。

2020年にLinkedInが出したジョブレポートでは、カスタマーサクセスが「今求められているポジジョン」の第6位にランクインしました。AIやデータサイエンティストなどに次ぎ、今世の中で求められているポジションなのです。特に、サブスクリプションビジネスに欠かせないカスタマーサクセス。このポジションに投資をすることで得られるメリットは、主に以下の3点です。

  1. チェーン(解約)の減少と管理
  2. 既存顧客の契約金増
  3. カスタマーエクスペリエンスと顧客満足度の向上

以上をふまえ、弊社が注目している「カスタマーサクセスを支える注目のスタートアップ」Vitally(バイタリー)をご紹介します。

Vitallyがフォーカスしているのは、B2B領域の、PLG(Product-Led Growth)系SaaSに強いスタートアップです。顧客に関するデータを統合し、既存顧客のエンゲージメントを高めるためのインサイトを、提供する機能を持っています。

その機能自体は、Gainsight(ゲインサイト)など従来のカスタマーサクセス製品にも備わっています。Vitallyの特徴はリーズナブルな価格です。例えば、Gainsightなら月額数百万円するところを、Vitallyなら月額数十万円程度に収まります。実際、GainsightユーザーがどんどんVitallyに乗り換えており、まだ十分な資金がないスタートアップなども、まずはVitallyを利用する傾向が強いようです。

2021年6月には、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)がシリーズAラウンドをリードしてVitallyに投資。結果、よりVitallyの認知度が高まり、成長を加速させています。カスタマーサクセスの担当者をつけ、Vitallyのようなツールを活用することで、アップセル・クロスセルから売上向上に繋げることができるかもしれません。

カスタマーサクセスというポジションは、営業やマーケティング出身の方にも適用しやすいポジションですので、将来のキャリアとしても非常に魅力的なポジションか思います。

 

Webinar記録は以上です。最後までお読みいただきありがとうございました。

Nissho USAは、シリコンバレーで35年以上にわたり活動し、米国での最新のDX事例の紹介や、斬新なスタートアップの発掘並びに日本企業とのマッチングサービスを提供しています。紹介した事例を詳しく知りたい方や、スタートアップ企業との協業をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

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Shuichi Noto

2008年にユニアデックス入社。5年間の大手通信キャリア向けの営業を経験した後、日商エレクトロニクスへ入社。大手OTTの情報システム部門向けにVDIやWeb会議などの働き方改革を促進するソリューションの販売に従事。2019年よりNissho USAに赴任。お客様のビジネスを共創&サポートできるようなソリューションの発掘を目指し日々活動中。担当領域はITインフラ全般、ヘルスケア業界、地域創生など。趣味はゴルフとサッカー。

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