米国イノベーティブカンパニー 2020.06.12

週刊米国ユーザートレンド&注目ニュース~銀行・カード・マネー②~

Weekly banking2

6月第2週の週刊コンテンツは銀行・カード・マネーをとりあげます。

1. 米ネオバンクUnifimoney、海に捨てられるプラスチックごみでVISAカードを発行

米サンフランシスコスタートアップであるUnifimoneyが、海に捨てられたプラスチックごみを活用し、非接触型決済機能を持ち合わせたVISAカードを発行することを発表しました。その第一弾として、2020年夏よりUBMバンクのVISAデビットカードを発行します。同社は銀行業務ライセンスをもたず、パートナーとなる銀行とエンドユーザ間のデジタルインタフェースを提供することで、エンドユーザへ銀行サービスを提供するネオバンクです。毎年世界中で発行される決済カードは64億枚以上にのぼると言われております。100万枚の決済カードをそのプラスチックごみを活用して作成することで、約1トンのプラスチックごみが海上へ流入することを防ぐことにつながります。また、海洋環境コミュニティ財団であるThe Ocean Foundation’s との提携により、同決済カードを活用するたびに同団体へ寄付が行われる仕組みも取り入れられています。環境に配慮されたこの取組と同社デジタルチャネルを通して、若者層へのビジネスチャンス獲得につながりそうです。

https://therising.co/2020/06/08/unifimoney-ocean-plastic-card/

2. BitPayとMastercardが提携。暗号通貨に対応した非接触型デビットカード発行へ

大手暗号通貨決済プロバイダーであるBitPayとMastercardが新たにパートナーシップを締結し、暗号通貨を活用した非接触型デビットカードを発行します。Mastercardにとっては初めて米国内で暗号通貨決済サービスを提供できるようになります。具体的には、暗号通貨であるビットコインやイーサを保有するユーザに対して本カードを発行し、カード保有者はMastercardのデビット決済ができる店舗で暗号通貨を手数料無しでUSドルに変換し活用するイメージです。また、オンライン利用やATMでのUSドル引き出しにも使うことが可能となります。BitPayは米国内にいる約3500万人もの暗号通貨保有者に対して、USドルへの変換価値を与えることで今後更なる暗号通貨ユーザを獲得し、また、マスターカードにとっても消費者に支払いの柔軟性や選択肢を与えることで企業価値を高めることにつなげます。実はBitPayは本分野で既にVISAカードと提携していましたが、今回のパートナーシップで完全にMastercardに切り替えるようです。暗号通貨の可能性をより感じさせられるパートナーシップですね。

https://www.businesswire.com/news/home/20200611005269/en/BitPay-Launches-Prepaid-Mastercard-United-States

3. AmazonとGoldman Sachsが提携。中小企業向け融資をスタート

Amazonが自社開発による中小企業向け融資プラットフォームリリースを断念し、大手Goldman Sachsとの提携を決断しました。Amazonといえば、これまでE-commerceビジネス以外の異業種参入に積極的ですが、融資という分野においては専門家の助けを借りて進めることを決定したようです。Goldman Sachsは、同社サブブランドでオンライン融資などを提供するマーカスのプラットフォームを活用し、Amazon出店企業に対してリアルタイム審査を行い、最大約1億円の融資を提供します。中小企業は在庫保有やマーケティング費用として活用することが可能です。今回の連携により、Goldman SachsはAmazon提携企業約190万社の情報にアクセスできる可能性が高まり、それら融資残高として約900億円にものぼる巨大なチャネルを活用できるチャンスが広がります。もし仮にその一部でも融資引き受けができるようになれば、Goldman Sachsとしての事業拡大につながることになります。一方、Amazonにとっても融資という観点で出店企業への付加価値を高めれられれば、よりAmazonプラットフォームの価値向上にもつながることになりそうです。多少なりともAmazonの決断はCOVID-19の影響もあるのかもしれません。

https://www.pymnts.com/amazon/2020/amazon-goldman-sachs-launch-smb-credit-line/

4. JP Morgan Chase 顧客体験向上に向けデジタルレシートマネジメントを導入へ

JP Morgan Chaseは、カナダトロントのテック企業であるSensibillのデジタルレシートソリューションを導入することを発表しました。これによりJP Morgan Chaseは同社が抱える3800万人以上のモバイルバンキングアプリユーザに対して新たなデジタル体験を追加します。デジタルレシート自身はさほど新しい考え方ではないように思いますが、銀行が提供するモバイルアプリと連携させることで、消費者のみならずBtoBバンキングユーザにとってもありがたい顧客体験を実現できます。例えば帳簿管理や税金処理などが当てはまるでしょう。デジタルバンキングの流れは、COVID-19以降、より積極的に進むことが予測されます。今回は特定の一機能のアップデートということになりますが、テクノロジーの積み重ねとよりライフスタイルに即したデジタルの顧客体験を提供することは益々活発になるように思います。

https://www.finextra.com/newsarticle/36001/jpmorgan-chase-to-debut-digital-receipt-management

まとめ

当社オフィスのあるサウスベイエリアでは、引き続きCOVID-19に対する警戒はあるものの、徐々にレストランがオープンするようになりました。残念ながら店内での飲食はNGですが、テラス席での飲食がようやく可能になりました。今回取り上げた記事もそうですが、今後、決済手段として、キャッシュ or カード or モバイルペイメントがどのように変化していくのは実体験として意識しながら共有していければと思っています。

最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事を書いた人

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Nobuyuki Komatsu

2004年、日商エレクトロニクス入社。JuniperやBrocade、Viptelaなどネットワークを軸としたインフラ製品の事業推進や新規ベンダー立ち上げに関与。2017年10月よりサンノゼ赴任。シリコンバレーで得られる最新の情報を発信しつつ、新たなビジネスモデル開発に向け日々奮闘中。2020年現在の担当領域は、クラウドやフィンテック、インシュアテックなど。バスケットボールとキャンプが趣味。

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