イノベーティブ・スタートアップ 2016.04.01
TEXT:Team Nelco

人工知能をどうビジネスで活用するのか?シリコンバレーの注目のスタートアップ 10選

人工知能がバズワードと言えるほどに話題になっています。今月には、GoogleがオーナーであるロンドンのDeepMindの囲碁ソフトが、世界トップクラスのイ・セドルに勝利したことが大きな話題になりました。DeepMindは、機械学習のテクニックを使ってどうやって囲碁の試合に勝つかを学んでいく、機械学習を行う点に特徴があります。この機械学習を使うことで、あと10年はかかるとも言われていた偉業を達成しました。

また、人工知能によって無くなる仕事についてのTV番組や雑誌の記事が話題になったり、技術が今のペースで発達し続けると2045年には人類の知能を超えた人工知能が誕生し、その人工知能がさらに自分よりも優秀な人工知能を開発するようになり、これが繰り返されることで、人間には予測不可能な未来が訪れる、シンギュラリティ(技術的特異点)が話題になっています。

しかし、いまの段階でどうやって、どんな形で人工知能を使えば良いのか、つまり、人工知能がいま役立つものなのか疑問に思われている方も多いと思います。そこで、今回はシリコンバレーを中心とした注目の人工知能のスタートアップをご紹介します。

1. 医療画像診断 Enlitic

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レントゲンやMRIなどの医療画像から異常を人工知能によって検知します。医師の診断に加えて、Enilticのシステムの診断を使うことで、精度と診断の速度を高めることができます。診断のミス、診断が出るまでの待ち時間、また再検査を減らすことができるため医療費の削減にもつながり、患者にとっても大きなメリットがあります。

ディープラーニングを用いた画像認識の精度は、すでに人間を超えていると言われるほど高度に発展しています。GoogleフォトやFacebookなど、普段使っているサービスでも多く利用されています。Googleフォトでは何が写っているのか正確に識別できますし、Facebookではアップロードした写真の人物が誰かを自動的に判定してくれることからも精度の高さが分かります。

調達額: 1500万ドル、本社: サンフランシスコ Photo by Enlitic

2. クレジットカードの不正利用検知 Sift Science

米国ではどこでもクレジットカードで支払うことが一般的です。しかしその便利さの反面、毎年300億ドル以上の不正被害があり大きな問題となっています。Sift Scienceは、不正利用のパターンを学習することにより、不正使用の検知を行います。OpenTable、Hotel Tonightなどの大手サービスもSift Scienceを利用しています。

クレジットカードの不正利用のシーンを想像してみましょう。普段使っていない場所で突然カードを使い始めた、普段とは全く違う店で使い始めた、突然利用金額が大きくなったなどは簡単に思いつきますし、実際にこういった場合の不正利用の可能性は高いでしょう。人工知能はこうしたデータ同士の関係性、パターンの認識が得意です。不正利用の取引とそうでない取引を大量に学習させることで、人間が思いつきもしなかった法則性を見つけ出すこともでき、高い精度で、高速に異常を発見することができます。

調達額: 2360万ドル、本社: サンフランシスコ

3. 新薬の開発 Atomwise

AtomwiseはYコンビネータ出身のスタートアップで、ディープラーニングを用いて新薬の発見をサポートする人工知能を開発しています。新薬開発では平均で約29億ドルの費用と12年の年月が必要と言われています。

Atomwiseの人工知能は、ディープラーニングに基づいており、既存の薬の分子構造と作用に関する何百万ものデータを自分で学習します。そして、分子構造を分析してそれらの作用を予測します。驚くのはその速さで、何百万もの分子構造の分析作業を数日という短い期間で調べることができます。

まだこの技術を使って開発された薬はありませんが、新薬開発のスピードを速めることで多くの人を救う可能性があります。

新薬以外の研究分野でも人工知能を活用する分野は次々と出てくるでしょう。このように、人工知能は全産業で活用できる可能性があり、人工知能が発展することで他の分野も大きく発展することが予想されます。

調達額: 635万ドル 、本社: サンフランシスコ

4. Webサイトの作成 The Grid

Webのデザインを人工知能が自動的に行うサービスです。利用者はテンプレートを選ぶこともなく、写真やテキストを入力するだけで、人工知能が写真やテキストを自動的に判定して、すべてのデバイスで美しく表示されるように最適なレイアウトに自動的に調整されます。

Webサイト作成には、時間やお金がかかりますが、作った後にも写真やテキストの変更の度に素材の入れ替えやレイアウトの変更が必要で、こうした運用のコストもバカになりません。The Gridを使えばそんな労力は必要ありません。まだ一般には公開されていませんが、今後が注目されるサービスです。

調達額: 460万ドル 、本社: サンフランシスコ Photo by The Grid

5. マーケティング・カスタマーサービス Wise.io

顧客の獲得からサポートまでをカバーする、人工知能を使ったツールを提供しています。例えば、既存顧客のこれまでの行動パターンを分析することで、新規顧客のうちの誰がロイヤルカスタマーになってくれるかを探しだし、それぞれの顧客に対して最適なマーケティングメッセージを見つけ出すことができます。また、過去の顧客からの問い合わせ対応とその結果から、どの問い合わせを誰が担当すべきか判断し、対応の優先順位をつけて自動的に割り振るツールを提供しています。

このように、これまでは人間に頼っていた分析や判断を人工知能が代わりに行うことで、効率化が実現されます。

調達額: 261万ドル、本社: バークレー

6、Webコンテンツの構造化 Diffbot

Webのコンテンツを人工知能で分析し、構造化するプラットフォームです。Web上のテキストデータの多くが構造化されていないため、分析や活用が難しいという問題がありますが、Diffbotはこの問題を解決しようとしています。記事からタイトル、著者、テキスト、画像、トピックなどを抽出したり、商品ページからタイトルや価格などの情報を抽出することができます。2015年4月には、掲示板やレビューサイトでの投稿も分析して抽出できるようになりました。

これらの機能はWeb APIとして利用できます。調べたいURLを指定するだけで、そのページを分析した結果をJSON形式で表示します。Diffbotを使うことで、自分が知りたい情報をWebから効率的に集められるようになります。

調達額: 1250万ドル、本社: サンフランシスコ Photo by Diffbot

7、テキスト分析 Idibon

人工知能を用いてテキストから情報を抽出したり、ソーシャルメディアから製品の評判を抽出するなどの技術を開発するスタートアップです。ソーシャルメディア上での、自社へのクレームなどの重要な情報をいち早く発見したり、自社の製品の購入を考えている人を見つけ出し、何に興味を持っているかなどの情報を得ることができます。

すでに大企業での利用例もあり、サムスンは自社のスマートフォンがソーシャルメディア上でそのような反応をされているかを調査するために利用しました。

10以上の言語で世界中で投稿される投稿を集めて分析し、ポジティブな反応やネガティブな反応、製品に対する意見を集めることに成功しました。

調達額: 690万ドル、本社: サンフランシスコ

8、位置データの分析 StreetLight Data

位置情報を用いたビジネスインテリジェンスのプラットフォームです。人々の移動のデータ(匿名化されたモバイルデバイスの位置情報)を解析し、どの時間帯にどのような人が集まっているのか、ある場所Aからある場所Bに移動する時に、どのような移動手段を使っているのか、店舗やATMなどを設置するのに最適な場所は何かなどを分析します。

例えば、小売店向けにどのような属性の人々が店の近くにいるかを提示するなどのように、位置情報を活用して小売店、不動産業者のマーケティング、都市計画、輸送業者に役立つデータを生み出すことができます。

調達額: 750万ドル、本社: サンフランシスコ

9、テキスト感情分析 MetaMind

人工知能による画像認識技術「MetaMind Vision」とテキストの感情分析等の技術「MetaMind Language」を企業向けに提供するスタートアップです。医療、マーケティングなど様々な分野で利用が可能です。

画像認識はディープラーニングが用いられており、写っているものを正確に識別してラベル付けすることができます。見分けにくい食べ物でも正確に認識することができます。画像を用いたレコメンドシステムや、カメラ画像を用いた異常検知などのシステムを構築できます。

テキスト分析では、感情分析、コンテンツを分析してタグ付けなどの機能を提供しています。

調達額: 800万ドル、本社: パロアルト、Photo by MetaMind

10. Palantir

ビッグデータ分析ソフトウェアとコンサルティングを含めたソリューションを様々な分野に提供する企業で、未上場でありながら評価額が205億ドルにも上るユニコーンで、ユニコーンの中でも、Uber、 Xiaomi、Airbnbに次ぐ4番目の評価額です。

カード不正利用から、サーバ攻撃に対するセキュリティなどの民間向けはもちろん、政府機関のデータ分析も行っていることが特徴です。CIAやFBI、空軍を顧客に持ち、国防なども含めた様々なデータ分析を行っています。

調達額: $24.2億ドル、本社: パロアルト

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Nissho Electronics USAの取組み

ここまで読んでいただければお分かりのように、これまでテクノロジーとはあまり縁がない分野、長年の経験と勘に頼るような分野にまで人工知能の波が押し寄せています。これにより、あらゆる企業にテクノロジーを活用するためのインフラ、高速でセキュアなネットワーク、膨大なデータを効率的に貯めるストレージ、よりリアルタイムに近いスピードで並列処理を行うコンピューティング基盤などが求められます。

Nissho Electronics USAは上記のようなトレンドを把握の上、来るべきデジタルビジネス時代に備え、様々な観点からシリコンバレーで調査を行い、日商エレクトロニクスと連携し、お客様に対し最適な提案をしてまいります。お問い合わせフォームより、どうぞお気軽にお問い合わせください。

 

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