イノベーティブ・スタートアップ 2022.04.14

今最も勢いのあるスタートアップ、法人カードを提供するRamp

今最も勢いのあるスタートアップはどこかと聞かれると、その1つは間違いなくRampです。そう言い切れる理由の1つが、これまでSlackが保持していた記録を破ってARR(年間経常収益)$100M(約120億円)到達を最短で達成したことです。

2019年に設立された同社は2年強でARR100Mを達成した後、2022年3月にはFounders FundのリードによりシリーズCで$200Mの調達に成功しました。現在の評価額は$8.1B(約9,700億円)でり、世界中から注目を集めているスタートアップです。本記事ではそんなRampについての注目ポイントを紹介していきたいと思います。

ARR $100までに到達するまでにかかった期間(Bessemer Venture Partners 記事から引用)

法人クレジットカードRampとは?

Rampは2019年にEric Glyman氏とKarim Atiyeh氏によりニューヨークで設立された法人カードのスタートアップです。創業者の2人はシリアルアントレプレナー(連続起業家)で過去3回のExit経験があります。そのうちの1社が、オンラインで購入した商品の価格が下がった際に自動で返金するサービスのParibusです。2人は同社を大手金融機関のCapital Oneに売却したことで高い評価を得ました。

法人クレジットカードのスタートアップと聞いてBrexを思い浮かべる人は多いでしょう。Brexはスタートアップの成長を助けるというコンセプトのもと、従来の与信基準を変えて素早くカードを発行したり、ZoomやWeWorkなどよく利用されるサービスのディスカウント特典を付けたりするなどして急成長を遂げました。一方、Rampは企業の支出を抑えるという違った切り口を売りにしています。

Rampの特徴は、法人カードの提供にとどまらず経費管理プラットフォーム機能を備えている点です。そこでは経費を可視化するだけでなく、独自のアルゴリズムを用いて顧客との取引履歴を分析し、経費削減のための提案を行います。

また2022年2月にはRamp for Travelという従業員の出張をサポートする新機能をリリースしました。この機能は会社が規定する支払上限などを設定できるため、従業員が規定額を超過するのを避けられます。それだけでなく領収書をすぐにアップロードできる仕組みもあるため、従業員が経費精算に費やす時間も削減できます。

さらに2021年8月に買収したNegotiation-as-a-Service(サービスとしての交渉)のBuyerと連携することで、値引きできる可能性のある支払先との価格交渉を代行し、企業の支出を抑えるサービスも提供しています。

NisshoUSA注目ポイント

私が注目したのはNegotiation-as-a-Serviceを提供するBuyerの機能です。私が日本で働いていた頃、エンジニアが利用サービスの価格交渉まで行うために本業(サービス開発)になかなか専念できないという話を聞いたことがあります。購買部ではなく事業部門が直接価格交渉を行う企業にとって、こうした価格交渉の代行サービスは受け入れられそうです。

さらにこうした価格交渉代行の効果は私自身が体験しています。以前の記事で紹介したサブスクリプション管理アプリをB2Cで提供するTrubillでも同じように価格交渉を代行するサービスを提供しており、実際に私が契約していたインターネット回線サービスComcastへの支払いを削減することができました。自分では気付かなかった値引きポイントを教えてくれたうえ、価格交渉までしてくれたのはとても便利だったこともあり、現在でもTrubillを利用しています。

Buyerの機能を使うとB2B領域でも同じような効果が期待できるうえ、削減できる金額はB2C領域よりも大きくなるに違いありません。今までにない新たな付加価値サービスを提供するRampは日本でも受け入れられるのではないでしょうか。

関連記事:価格交渉まで代行してくれるサブスクリプション管理アプリTrubill

会社概要

設立年 2019年
所在地 米国ニューヨーク
従業員 251-500名
チーム Eric Glyman(Co-Founder & CEO)、Karim Atiyeh(Co-Founder & CTO)
資金調達 $1.4B(約1,680億円)
VC Founders Found、Apple、Stripeなど
URL https://ramp.com/

※crunchbaseデータベース参照

最後までお読みいただきありがとうございました。
Nissho USAは、シリコンバレーで35年以上にわたり活動し、米国での最新のDX事例の紹介や、斬新なスタートアップの発掘並びに日本企業とのマッチングサービスを提供しています。紹介した事例を詳しく知りたい方や、スタートアップ企業との協業をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

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Shuichi Noto

2008年にユニアデックス入社。5年間の大手通信キャリア向けの営業を経験した後、日商エレクトロニクスへ入社。大手OTTの情報システム部門向けにVDIやWeb会議などの働き方改革を促進するソリューションの販売に従事。2019年よりNissho USAに赴任。お客様のビジネスを共創&サポートできるようなソリューションの発掘を目指し日々活動中。担当領域はITインフラ全般、ヘルスケア業界、地域創生など。趣味はゴルフとサッカー。

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