シリコンバレーテクノロジー 2020.11.05

2020年Q3投資トレンド分析

先日、スタートアップや投資情報を提供しているCrunchbase NewsからQ3 2020 Global Venture Reportが発表されました。今回はその内容を解説しながら、2020年Q3(2020年7月〜9月)のグローバル投資動向、VC(ベンチャーキャピタル)動向、話題になった買収事例や上場を果たした企業などを取り上げ、今後のトレンドについて考察をしていきたいと思います。

関連記事:2020年上半期投資トレンド分析

2020年Q3の投資額は$76B(約8兆円)で前年比9%増加

2020年Q3のグローバルの投資額は$76B(約8兆円)となりました。2019年Q3と比較して約9%増加、2020年Q2と比較して約1%増加という結果です。全体的な傾向としてはシートステージ、アーリーステージへの投資は減少する中、レイターステージへの投資が増加しており全体の投資額を押し上げていることが分かります。

アーリーステージの2020年Q3の投資額は$19B(約20兆円)、2019年Q2と比較して約18%減少している一方、レイターステージの2020年Q3の投資額は$48B(約5兆円)となり、2019年Q2と比較して24%増加しているという結果になりました。Q3で大型調達に成功した事例としては、民間宇宙ベンチャーのSpaceXが$1.9B(約1,995億円)を調達、温度管理物流ソリューション企業のLineage Logisticsが約1,680億円の調達に成功するなどの事例がありました。

四半期毎のグローバル投資推(crunchbase Newsから転載)
四半期毎のアーリーステージへの投資推移(crunchbase Newsから転載)
四半期毎のレイターステージへの投資推移(crunchbase Newsから転載)

ウィズコロナ時代にアクティブなVC

実際に投資を行っているVCについて注目すると、Q3で投資数が最も多かったのはシード、アーリーステージを中心に投資をするGlobal Funders Capitalで、新規ポートフォリオへの投資が20件、既存ポートフォリオへの投資が6件でした。同社での投資件数は2020年Q1に24件、Q2に18件だったことを考えると、新型コロナウィルスの影響で減少傾向にあるアーリーステージに対しても変わらず投資を継続している様子が窺えます。

165件ものエグジット経験を持つLightspeed Ventureは2020年Q1に21件、Q2に20件の投資を行っていました、Q3では24件に上りました。新型コロナウィルスの影響でVCの活動も落ち込むことが予測される中、逆に好機と捉え積極的に投資を行うVCの動向もトレンドを把握する上では重要なポイントとなってくるのではないでしょうか。

2020年Q3のVC投資数(crunchbase newsから転載)

買収額$5B(約5,250億円)を超える大型買収が3件

2020年Q2では$1B(約1050億円)を超える買収は6件、その中でも最も買収額が大きかった事例はソーシャルゲーム会社ZyngaによるPeak Games買収で$1.8B(約1,890億円)でした。Q3では買収額が$5B(約5,250億円)を超える大型買収が3件あり、新型コロナウィルスの影響で減少傾向だった企業買収についても回復の兆しが出てきました。


ここでは買収額が$1B(約1,050億円)を超えた5つの事例を紹介します。

  1. IlluminaがGrailを買収(買収額:$8B / 約8,400億円)
    遺伝子シーケンスのIlluminaが、がん検知を行う遺伝子シーケンスツールの開発をしているGrailを買収。Grailは2016年にIlluminaからスピンオフしたスタートアップであり、今回の買収で出戻りとなります。
  2. MicrosoftがZeniMaxを買収(買収額:$7.5B / 約7,875億円)
    Microsoftがゲーム開発会社のZeniMaxを買収。Microsoftは今回の買収でZeniMax傘下のBethesda Softworksが持つ「Wolfenstein」や「Fallout」などの人気タイトルを手にすることになり、今後XboxやオンラインゲームにBethesdaの新作ゲームを組み込む予定です。
  3. AVEVAがOSIsoftを買収(買収額:$5B / 約5,250億円)
    産業用ソフトウェアを提供するAVEVAが、産業用IoTデータ基盤を手掛けるOSIsoftを買収。OSIsoftが持つリアルタイムにIoTデータを収集して可視化をする基盤をAVEVAのポートフォリオに加えることでサービスの向上に繋げます。
  4. UberがPostmatesを買収(買収額:$2.7B / 約2,835億円)
    配車サービスのUberが食品配達サービスのPostmatesを買収。新型コロナウィルスの影響で配車サービスが低迷する中、今後も市場が成長すると想定される食品配達サービスの拡充を目指します。
  5. EQTがidealista.comを買収(買収額:$1.5B / 約1,575億円)
    スウェーデンの投資会社EQTが不動産のオンラインプラットフォームサービスを提供するidealista.comを買収。idealistaの経営陣と共にEQTが持つテクノロジーノウハウを活用しながら更なる成長を目指します。
2020年Q3の買収事例一覧(crunchbase newsから転載)

COVID-19の時代にIPOをした注目の企業

2020年Q3に入っても新型コロナウィルスの影響で経済は厳しい状況ですが、その中でも世界中から注目を集めるような大型IPOを果たした企業がいくつもありました。

今回はその中からIT企業を3社ピックアップしてご紹介します。

  1. Snowflake(クラウドデータウェアハウス)
    Snowflakeはクラウドで利用できるデータウェアハウスを提供する企業です。コンピュートとストレージのリソースを完全に分離させた独自のアーキテクチャで、複数のワークロードが発生してもパフォーマンスを低下させることなく処理できる点が最大の特徴です。今回のIPOで$3,360M$(約3,528億円)を調達し、今年最大のIPOとなりました。
  2. Palantir Technologies(データ解析)
    Palantirはデータ分析を行う前処理のデータ統合のほか、データ管理からデータ分析まで一貫して提供します。SOMPOホールディングスと共同で日本法人Palantir Japanを設立するという発表でも話題になりました(事業開始は2020年12月1日予定)。また創業者はPayPal創業者のPeter thielということで知られています。
  3. Asana(ワークマネジメントプラットフォーム)
    Asanaは誰でも簡単に使えるワークマネジメントプラットフォームを提供しています。普段から使われているメール、クラウドストレージ、チャットなどをAsanaに取り込むことで、業務の進捗や状況を可視化し、個人と組織のパフォーマンスを向上させます。
2020年Q3のIPO事例一覧(crunchbase newsから転載)

NisshoUSA注目ポイント

Q3データを分析してみた感想としては、投資額が増加していることが意外な結果でしたが、その中身を見ていくと大企業が大型投資をしているケースが多々見受けられました。現在の変化が激しい状況を好機と捉えて積極的にビジネスを加速させるような動きが活性化しているように思えます。

1度は落ち着いたように見られる新型コロナウィルスですが、10月にフランスが2度目のロックダウン措置を導入するなど、先の予想がしづらい状況が続いています。そのような状況下でもどのように市場が変化していくのかを予想しなければならず、その予想を手助けする重要な情報の1つは今回ご紹介した投資や買収情報なのではないでしょうか。今後も投資動向についてはフォローしていきたいと思います。

関連記事:2020年10月に誕生した注目のユニコーン企業6社

最後までお読みいただきありがとうございました。
Nissho USAは、シリコンバレーで35年以上にわたり活動し、米国での最新のDX事例の紹介や、斬新なスタートアップの発掘並びに日本企業とのマッチングサービスを提供しています。紹介した事例を詳しく知りたい方や、スタートアップ企業との協業をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた人

この記事を書いた人

Shuichi Noto

2008年にユニアデックス入社。5年間の大手通信キャリア向けの営業を経験した後、日商エレクトロニクスへ入社。大手OTTの情報システム部門向けにVDIやWeb会議などの働き方改革を促進するソリューションの販売に従事。2019年よりNissho USAに赴任。お客様のビジネスを共創&サポートできるようなソリューションの発掘を目指し日々活動中。担当領域はITインフラ全般、ヘルスケア業界、地域創生など。趣味はゴルフとサッカー。

この記事をシェアする

私たちと話しませんか?