イノベーティブ・スタートアップ 2021.08.24

Yコンビネーター出身の注目スタートアップ10社

米国で最も人気のあるアクセラレーターの1つYコンビネーター(以下YC)の2021年夏デモデーが2021年8月31日から2日間にかけて開催されます。多くの日本企業が注目するYCですが、実際にシードステージのスタートアップに対して投資や協業に踏み切る企業は多くありません。私自身もYCデモデーに参加をしつつも目に留まったスタートアップに投資することはほぼないのが実態です。しかしYC出身のスタートアップには上場やユニコーンにまで成長する企業が数多くいるため、次のトレンドを先取りするという観点でやはり押さえる必要があります。

そこで今回はYC出身のスタートアップで最も成功している未上場の企業トップ10をご紹介します。その顔ぶれと中身を知ることで、改めてYCデモデーに注目する重要性に気付くかもしれません。

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1. Stripe(フィンテック)

Stripeはインターネット向け決済インフラ機能をAPIで提供します。自社のECサイトに決済機能を追加したい場合、Stripeを使えば簡単に実装することができ、決済金額の2.9%+$0.3をStripe側へ支払います。評価額は$950M(約10.4兆円)で、未上場スタートアップとしてはTikTokを運営する中国のBytedanceに次いで第2位です。

2. Instacart(買い物代行)

連携している小売店の商品をアプリで選んで決済すると、ギグワーカーが店に行ってその商品をかごに入れ、家まで届けてくれる買い物代行サービスです。2021年8月にフードデリバリーサービスのDoorDashが同社を買収する打診をしていましたが、独占禁止法の取締強化を受けて交渉は破談となりました。

3. Cruise(自動運転)

2013年創業のCruiseは自動運転車を提供する企業で、SoftBank VisionやHonda Motorなどから出資を受け成長を遂げた後、2016年にGeneral Motorsに買収されました。GM傘下になった後も自動運転技術の開発を進めており、2021年6月にはカリフォルニア州で無人運転車に客を乗せることができる許可書を取得して自動運転の実現に向けて大きな1歩を踏み出しました。

4. Brex(法人向けクレジットカード)

Brexはスタートアップ向けの法人クレジットーカードを提供します。米国ではクレジットカードを作成する際に「個人」のクレジット履歴を基準にするため、スタートアップなどの場合は限度額が低くなったり、カード発行の際に個人資産の担保が必要だったりとさまざまな課題がありました。そのような中、Brexが提供する法人カードは個人保証・保証金なし、限度額が他のカードよりも高い、AWSやZoomライセンスなどの割引を受けられるなど、スタートアップに向けた様々な特典を用意。現在ではユニコーンにまで成長を遂げています。

5. Scale AI(AI開発)

Scale AIは、AIエンジンの重要な要素となるタグ付け処理を高速かつ正確に実施するテクノロジーを提供します。例えば本ランキング3位のCruiseのような自動運転車を開発する企業の場合、カメラから得る大量の画像情報を利用可能なデータにするためタグ付け処理をしなければならず、その処理に時間と労力がかかっていました。Scale AIはそのような面倒な処理を引き受けることでAIエンジンの精度を高めています。

6. Faire(B2Bマーケットプレイス)

Faireは小売業者向けにブランド製品を販売するB2Bマーケットプレイスを提供することで、新たな商品の発掘と調達を容易にしています。これにより、業者は新しい製品を発掘するためにさまざまな展示会やイベントに足を運ばなくても、オンラインで簡単に新製品に出合えるようになりました。さらに60日以内であれば調達した商品を無料で返品できる仕組みなどを取り入れている点が小売業者の支持を集め、成長を続けています。

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7. Reddit(掲示板サイト)

Redditは米国で人気のある掲示板サイトです。その中にはsubredditというコミュニティが多数あり、その中でユーザーは趣旨に合ったスレッドを自由に立ち上げることができます。2021年8月12日にFidelity Management and Research Companyから$410Mの大型資金調達に成功をしました。

8. Zapier(ワークフローオートメーション)

ZapierはGmailやSlackなどのクラウドサービス同士をノーコードで連携させる自動化ツールです。例えば、Google CalendarやTwitterの更新をSlackで通知するなどの連携をコーティングなしで実現することができます。2021年3月にノーコードに特化したオンラインスクールのMakerpadを買収しました。

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9. Gingo Bioworks(バイオテック)

2014年クラス卒業のGingo BioworksはYCが初めて投資したバイオテックのスタートアップです。食品や医薬など様々な業界向けに微生物の設計から量産まで提供しており、顧客は製品開発や研究のスピードを高められるようになりました。身近な例としては植物肉やワクチン開発などでも活用されているケースがあります。2021年5月にSPACで上場しました。

10. Rappi(ラテンアメリカ向け宅配アプリ)

コロンビアに本社を持つRappiはラテンアメリカ向けの宅配アプリを提供します。その特徴はレストランの料理だけではなく、食料品からドラックストアの製品など幅広く宅配する点です。2019年に組成されたラテンアメリカ市場に特化したファンド、ソフトバンク・イノベーション・ファンドが最初に選んだ投資先として注目を集めました。

NisshoUSA注目ポイント

この2年間YCデモデーに参加して感じることは本ランキング第10位のRappiのように、米国で成功したビジネスモデルを他地域に合うようカスタマイズしたスタートアップが増えている点です。RappiではフードデリバリーのDoorDashと買い物代行のInstarcartを組み合わせたビジネスモデルをラテンアメリカ市場にカスタマイズして提供していますが、日本でもYCデモデーのスタートアップから学んだビジネスアイデアをカスタマイズできるかもしれません。新たなアイデアの着想を得るという点でもやはりYCデモデーは注目するべきイベントの1つではないでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。
Nissho USAは、シリコンバレーで35年以上にわたり活動し、米国での最新のDX事例の紹介や、斬新なスタートアップの発掘並びに日本企業とのマッチングサービスを提供しています。紹介した事例を詳しく知りたい方や、スタートアップ企業との協業をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

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Shuichi Noto

2008年にユニアデックス入社。5年間の大手通信キャリア向けの営業を経験した後、日商エレクトロニクスへ入社。大手OTTの情報システム部門向けにVDIやWeb会議などの働き方改革を促進するソリューションの販売に従事。2019年よりNissho USAに赴任。お客様のビジネスを共創&サポートできるようなソリューションの発掘を目指し日々活動中。担当領域はITインフラ全般、ヘルスケア業界、地域創生など。趣味はゴルフとサッカー。

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