シリコンバレーテクノロジートレンド 2021.02.25

暗号通貨での特典からオフィスのホテル化まで!CBインサイツによる2021年のテックトレンド12

スタートアップやテクノロジー企業のデータベースを提供するCBインサイツから、2021年のテックトレンドが発表されました。多くのトレンド予測では新型コロナウイルスの影響もあり、ヘルスケアやワークスペースを取り上げられていることが多いですが、今回はそれ以外に暗号通貨や幻覚ドラックなどに関するトレンドなど、新たな気付きを与えてくれる内容が多かったように思えます。

今回はその12のトレンドについて、それぞれのポイントをご紹介していきたいと思います。

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  1. CPO(Chief Prepper Officer):最高危機管理責任者の役割が重要に
  2. 量子コンピューター時代のデータ保護
  3. 感情の分析
  4. 幻覚ドラックとテクノロジー
  5. 排他的ネットワーク
  6. Society-as-a-Service(サービスとしての社会)
  7. メタバース(仮想空間)モール
  8. 暗号通貨によるリワード
  9. スペースの再利用
  10. オフィスのホテル化
  11. 健康促進をサポートするテクノロジー
  12. 在宅病院

 

1 CPO(Chief Prepper Officer):最高危機管理責任者の役割が重要に

  • 前例のないパンデミックのような外部からの脅威に対し、今後レジリエンス(回復力)が組織機能としてより重要になってくる
  • 大規模な脅威はパンデミックだけでなく、電力網などやそのほかのインフラに対するサイバー攻撃、気候変動による異常気象なども考えられる
  • 周到に用意しておかないと、今回のパンデミックのようにリモートワークの強化、サプライチェーンの見直し、実店舗における電子決済化などの対応に追われる状況が発生する
  • Appleはサプライチェーンの見直しを進めており、生産工場のリスク回避のためにベトナムでの生産を増やしている
  • 多くの企業は、需要の変動を予測し変化に迅速に対応するためAIのようなテクノロジーの導入検討を加速している

2 量子コンピューター時代のデータ保護

  • 量子コンピューターを活用することで高速な処理が可能となり、金融や物流などさまざまな業界に変革をもたらすことが期待される一方、企業はデータ保護について再考する必要がある
  • なぜなら一般的に使われているRSAのような暗号化アルゴリズムは量子コンピューターにより解読できてしまう可能性が高いため
  • 現在マイクロソフトやIBMなどの大手テック企業が量子コンピューターに対する新しい暗号化技術(ポスト量子暗号)を開発中。またNIST(米国立標準技術研究所)は2022年にポスト量子暗号化の標準を発表する予定
  • オックスフォード大学から派生したスタートアップPQShieldは企業がポスト量子暗号へ移行する支援サービスを提供している

3 感情の分析

  • 今後企業は消費者とのつながりを構築していく上で「人間の感情」を読み取る技術に注目が集まる
  • 顔の表情、声のパターン、テキストの内容などから感情を読み取り、収集した「感情データ」を利用することで消費者により良いサービスを提供していくことが可能となる
  • 感情認識AIを提供するAffectivaは、人間の表情と感情を分析する技術を活用することで企業の営業成績向上が可能だと主張
  • Amazonが2020年12月に発売したフィットネスバンド「Halo」にも声のトーンを分析する機能が実装されており、健康維持をサポートしている
  • 自動車業界では、ドライバーの疲労度やストレス度合いなどをモニタリングする開発も初期段階で進んでいる
  • 感情を読み取る技術は新しい概念ではないが、今後様々な業界で活用されていくことになるだろう

 

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4 幻覚ドラックとテクノロジー

  • サイケデリック(幻覚剤によって生じる幻覚や陶酔状態にあること)医薬品に注目が集まっている
  • 2020年にこの領域に投資された額は約500億。前年度比約4倍となった
  • サイケデリックと幻覚剤の健康効果を研究する臨床試験も増加しており、2020年で32もの試験が開始されている
  • その一方、2020年11月ワシントンDCではサイケデリック治療を違法化する動きもある
  • オレゴン州では米国で初めてプシロシビン(幻覚性キノコに含まれる麻薬)を合法化し、監督下のもと治療に使用することができるとした
  • 合法化された医薬品が市場に出回る際には、遠隔監視やカウンセリングができるプラットフォームや、患者データにアクセスしてリアルタイムで状況を把握できる仕組みなどが必要になる
  • このような流れからテック企業と製薬会社がタッグを組み、医薬品の市場に参入を試みる動きが出てきている
  • 2021年1月にはバイオテック企業のEntheon Biomedicalがサイケデリック治療で患者がどのような反応をするかを予測する遺伝子検査スタートアップのHaluGenを買収したが、このようなM&Aや提携が今後さらに増えていくことが予想される

5 排他的ネットワーク

  • ソーシャルネットワークの未来は排他的ネットワークになるだろう
  • Facebookが初期に大きく成長した要因の1つが排他性(最初はハーバード大学のみ、その後にスタンフォード大学やボストン地域の大学へ対象を拡大)であった
  • 排他性は決して新しい考えではないが、今後のソーシャルネットワークやコミュニティはその規模ではなく、そのコミュニティー内の人脈の質によって価値が決まってくる
  • さらに排他的ネットワークが広まると、そのコミュニティ内でやり取りされる情報のプライバシーを保護する方法と、コンテンツをメンバー内に留める方法の2つが、他のコミュニティとの差別化要因になってくる可能性がある
  • 排他性のあるコミュニティは既に様々なコミュニティで広まっており、その中にはは名門大学の学位を持つ人をターゲットにした招待制のデートアプリThe Leagueなどもある。今後も多くの分野でこのような排他的ネットワークが広まっていくだろう

 

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6 Society-as-a-Service(サービスとしての社会)

  • 現在シリコンバレーを拠点としている企業や人が、テキサス州オースティンやコロラド州デンバーなどの急成長中のハイテク・ハブ都市に移りつつある
  • Jet.comを設立した後Walmart(世界最大級のスーパーマーケットチェーン)のEコマース部門責任者を務めたMarc Lore氏は、新たな都市の建設をするためにWalmartを退職することを発表。目指すのは、ニューヨークの活気と多様性、東京の効率性と安全性、スウェーデンのガバナンスと社会サービスを持つ新たな都市
  • トヨタやFacebookのような巨大企業は従業員向けに都市を開発したり、新製品の実証実験の場とすることを目的とした都市開発を計画している
  • マイクロソフト創業者のBill Gatesは数年前にアリゾナ州に土地を購入し、未来の都市構想を練り上げている
  • 世界の多くの国が、独自の技術を駆使し価値を反映した新たな都市の開発を熱望している
  • このような都市建設活動が盛んに行われている中、2019年設立のPronomos Vapital(米国のベンチャーキャピタル)はPeter Thiel(PayPal創業者)やMarc Andreessen(A16Z創業者)などから資金の支援を受け、シリコンバレーのような新たなコミュニティを作るために活動している
  • このようなゼロから都市を作る壮大なプロジェクトは様々な論争を巻き起こすことが予測されるが、世界を変えることを夢見ている起業家やVCは今後も勢いを増していくだろう

7 メタバース(仮想空間)モール

  • 実店舗のモールが衰退していく中、仮想空間で人との関わり方、ビジネス、買い物など、様々なものが再定義されていく
  • 現在はオンラインゲームがその仮想空間のあり方を構築する最前線にある。既にFortniteなどではゲーム内でコンサートが開催されるなど、人々の新たな交流の場となっている
  • 現時点では技術的な問題でオンライン上のコンサートなどに参加ができる人数は制限される場合があるが、今後技術の発展でそれらの問題も解決していくことが想定される
  • 例えばオンラインゲームプラットフォーム開発のユニコーン企業Improbableは、最大2万人のプレイヤーをサポートするプラットフォームSpatialOSを開発している
  • またゲームの流れからバーチャルグッズが普及し、その後ファッション、不動産、ペットの世界まで拡大し仮想空間の市場規模は約20兆円まで成長した
  • さらに仮想空間と現実世界の融合も進むことが想定され、今までは現実世界で製品をリリースし仮想空間に放り込むという流れだったが、将来的にはその逆の流れが生まれることが予想される
  • そのためバーチャル製品の提供がトレンドとなり、小売店のあり方が変わると共に没入型のショッピング体験などが普及していくことになる

8 暗号通貨によるリワード

  • 一部の暗号通貨が史上最高値を更新するなど、再び注目を集めている
  • また従来クレジットカードなどの特典で得られていたマイルなどは新型コロナウイルスの影響で旅行ができないなか、消費者の関心度合いが低下傾向に
  • そのような流れからリワードを暗号通貨で提供するスタートアップが登場
  • リワードプラットフォームを提供するLolliでは、消費者がそのプラットフォームで買い物をすることビットコインでキャッシュバックを獲得できる。例えばadidasやUdemyなどの小売店やサービスでは最大30%のキャッシュバックを得られる
  • Lolliの顧客のうち、初めてビットコインを利用する人が約40%で、リワードを機に暗号通貨を始める消費者が増加している
  • 米国スタートアップのBlockFiが提供するクレジットカードでは、全ての購入に対し1.5%のビットコインバックを提供する
  • 暗号通貨によるリワードは、消費者にとって魅力的な新たなサービスとなり得る可能性を秘めている

9 スペースの再利用

  • リモートワークへの移行、小売店の閉店、都市部離れなど、企業や個人にとってスペースの再定義が必要となる
  • ネガティブな側面だけではなく、物流センター、ヘルスクリニック、垂直農法(高さのある建築物の階層や、傾斜面をつかって農業をすること)向けにスペースを再利用することで新たなビジネスチャンスを生むことができる
  • 駐車場の中にはドライブインの映画館や医療検査場として活用され始めた例があるほか、レストランではゴーストキッチン(デリバリーサービス専用の調理専用のスペース)やシェアリングキッチンなど、スペースを有効活用することで新たなビジネスに繋げている
  • スペースの有効活用は決して新しい概念ではなく、これまでもWeWorkなどではシェアリングオフィスとして新たな価値あるスペースを提供してきた。今後規制が暖和されると、スペースの価値が再定義されるこのタイミングは大きなビジネスチャンスとなるだろう

10 オフィスのホテル化

  • リモートワークがオフィスワークと同じ、またはそれ以上に生産性が高いことが証明されるにつれ、多くの企業ではオフィスの在り方を再定義する必要が出てくる
  • 長期的にはGoogleなどのハイテク企業などに代表される他の人との交流を促進するようなオフィスデザインから、ホテルのような短期滞在型に変化していくことが予想される
  • 従業員は必要な時にのみ、事前に個人のワークスペースを予約して週に数回だけ物理的なオフィスに出社するという文化が浸透していく
  • 企業としても従業員1人1人のデスクや会議室などを用意する必要がなくコスト削減に繋がる
  • リモートワークではZoomのようなウェブ会議システムを活用しオンラインミーティングを実施しているが、今後VR(仮想現実)技術の進歩に伴い、バーチャル世界でありながら対面で会話しているような体験をすることができるようになることで、オフィスの価値やあり方が変化していく

11 健康促進をサポートするテクノロジー

  • パンデミックをきっかけに改めて健康に注目が集まる中、従業員や消費者の健康促進のためオフィスや家庭に様々な技術が取り入れられている
  • 調整可能なサーカディアンリズム(概日リズム)対応の照明、目覚めをサポートしたりリラックス効果がある香りを発するデバイスなどが注目されている
  • 米国スタートアップのPura Scentsは複数の香りを出すデバイスを提供しており、アプリ上で時間をセットして自動的に香りを出すことで生活リズムを整えるサポートをしている
  • これらは決して目新しい技術や製品ではないが、自ら生活環境や仕事環境を整えることができるとより幸せになれるという研究結果も出ていることから、パンデミックをきっかけに今後も注目を集めていく分野になるだろう

12 在宅病院

  • 新型コロナウイルスの影響で様々な医療サービスがリモートで行われるようになり、その価値が明かになりつつある
  • さらに技術革新により在宅で受けれるサービスが増加していることから、在宅で受けることのできる医療サービスの範囲は今後も増えていくことが想定される
  • 例えば米国スタートアップのModern FertilityではSTI(性感染症)検査やビタミン欠乏症検査などの健康状態を見る検査から、不妊検査まであらゆる検査を郵送で行い、自宅で検査できるサービスを提供している
  • カイザーパーマネンテ(米国の三大健康保険システムのひとつである健康維持機構)では大腸がんの検診の機能を家庭に導入するなどの取り組みを行っている
  • 様々な検査や遠隔医療サービスが在宅で受けれるようになることは、移動が困難で病気にかかりやすい高齢者層にとってはより重要なことになるだろう

Nissho USA注目ポイント

この中から最も興味を引かれたのは「暗号通貨のリワード」です。今までクレジットカードやECサイトを選ぶ際にはマイルの貯めやすさを見て選んでいましたが、旅行が難しくなりマイルへの関心が以前と比べ低くなっている中、ビットコインなどの暗号通貨を手軽に始めるにはリスクもなくちょうど良いサービスだと感じました。暗号通貨に興味はあるけど始めるきっかけがないという人、マイルへの関心が低くなっている人は他にはぴったりのサービスかもしれません。

一方、今回のトレンドで共感ができなかった点はオフィスのホテル化です。確かにリモートワークが浸透するにつれ、生産性が高くなった業務は多いかと思いますが、その一方で対面でのコミュニケーションの価値に気付いたということもあります。やはりコミュニケーションを活発化させるようなオフィスはパンデミック後も必要になってくるのではないでしょうか。

最後までお読みいただきありがとうございました。

Nissho USAは、シリコンバレーで35年以上にわたり活動し、米国での最新のDX事例の紹介や、斬新なスタートアップの発掘並びに日本企業とのマッチングサービスを提供しています。紹介した事例を詳しく知りたい方や、スタートアップ企業との協業をご希望の方はお気軽にお問い合わせください。

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この記事を書いた人

Shuichi Noto

この記事を書いた人

Shuichi Noto

2008年にユニアデックス入社。5年間の大手通信キャリア向けの営業を経験した後、日商エレクトロニクスへ入社。大手OTTの情報システム部門向けにVDIやWeb会議などの働き方改革を促進するソリューションの販売に従事。2019年よりNissho USAに赴任。お客様のビジネスを共創&サポートできるようなソリューションの発掘を目指し日々活動中。担当領域はITインフラ全般、ヘルスケア業界、地域創生など。趣味はゴルフとサッカー。

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